カンボジアの「独裁」はどれほどひどいのか NGO、専門家、メディア当事者が証言

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こちらの映像をご覧ください。これは、市民のデモを弾圧するカンボジアの治安部隊の映像です。一般市民に暴力をふるう、これが現在の状況だとみなさんに理解してほしい。国内の人が声を上げられなくなっている今、外部にいる私たちが声を上げることが大切です。

「どんどん一般市民が委縮するような状況に」

堀潤:今日はカンボジアで実際に活動するNGOの方、専門家の方も参加していらっしゃいます。ご意見を聞いていきましょう。日本国際ボランティアセンター(JVC)の長谷部さんお願いします。

(「Freedom of Assembly in Cambodia」by LICADHO Canadaより)

長谷部貴俊(日本国際ボランティアセンター(JVC)事務局長):昨年シェムリアップ州中心にカンボジアに3カ月出張していました。その時の所感も交えてお伝えしたいと思います。近年のカンボジアの経済成長率は7%で、プノンペンの15年来の知り合いもものすごく裕福になっています。一方で、活動地の農村では大学に行ける人は70年の歴史で1村から1名、2名しか出ていません。みんな生活のために出稼ぎに行くなど、格差の拡大を感じます。日本国際ボランティアセンター(JVC)として日本で安保法制について声を上げた時、「ここでは同じようなことはやめてくれ」と言われることもあった。先ほどのデボラさんの話にあった「ニワトリを黙らせるために、そのうちの数羽殺してしまう」というのは、本当にそういうことがあるのだと感じています。また、政府開発援助(ODA)大綱( 開発協力大綱(外務省))に書いてある基本原則をしっかり実践してほしい。

堀潤:メコン・ウォッチの木口さん、お願いします。

木口由香(特定非営利活動法人メコン・ウォッチ理事):私たちは大規模開発に注目し、それが住民の利益になっているかを監視しています。住民の立ち退き問題で、保証につながる活動などを実施しています。地域の住民の方たちの話を聞いて、地域のNGOなどと共同で政府に働きかけています。この時には、住民・NGOの忌憚ない意見を聞くことが必要なのですが、支障が出てきています。パートナー団体の「Equitable Cambodia」は活動を中止させられましたが、活動を再開するための条件や、何が抵触したのかについて示されておらず、再開ができない状態です。また、他の団体が出した声明などが、「色のついた革命と連座した行動だ」と国内メディアで非難されたこともあります。どんどん一般市民が委縮するような状況になっていると感じます。そして、複数政党制が担保されていない状況で、選挙援助の効果は望めないと考えています。

(「Freedom of Assembly in Cambodia」by LICADHO Canadaより)

堀潤:高木仁三郎市民科学基金の白井さん、お願いします。

白井聡子(認定NPO法人高木仁三郎市民科学基金アジア担当プログラムオフィサー):私は、技術開発が民主主義を揺るがす諸問題の中の、アジアプログラムを担当しています。先ほどの伊藤さんがお話しされた、環境保護団体スタッフの逮捕にも非常に驚いています。彼らは国際的・国内的な視点で守られるべき自然について、マングローブ林での政府もからむ違法な砂の採取のストップなどを目指していました。その採取は、自然のめぐみに依存して生きる住民の生活を脅かすほど大規模なものでした。このような違法な採取で企業が一方的に巨額の富を得る行為を、カンボジア政府は黙認していました。それを、環境保護団体のスタッフが活動し、大規模な砂の輸出をストップするなど成果を出していたのですが、突如逮捕。国外退去処分に追い込まれてしまい、強い懸念を持っています。彼らは貴重な資源や地域の人の生活を守ろうと非暴力の取り組みをしており、罰せられるべきは別なのではないかと感じます。今カンボジアのNGOの「N」は「NON-Governmental(非政府)」ではなく「NEAR-Governmental(政府に近い)」だと感じます。

堀潤:UNTAC人権担当官(カンボジア1992~93年)のご経験もある東京大学大学院教授の佐藤さん、お願いします。

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