カンボジアの「独裁」はどれほどひどいのか NGO、専門家、メディア当事者が証言
佐藤安信(東京大学大学院教授・弁護士):(デボラさんの父で「カンボジア・デイリー紙」の創設者)バーナード・クリッシャーさんも、当時私がカンボジアで活動していた際に国王とともに訪問してくれたことがありました。日本が戦後賠償を求められた時にカンボジアが真っ先に助けてくれたこともあり、日本はカンボジアの支援をしています。私はUNTACの人権担当官として法の支配を支援してきましたが、現在多くの人権侵害が合法的に行われている状況を見ると、これまでの法整備支援がなんだったのかと感じてしまいます。
民主主義と法の支配はセットで、今もJICAや外務省は法整備支援に取り組んでいます。しかし、形骸化してきちんと働いていません。ただ、そこで援助を止めるべきとは考えません。援助を止めることは、ある意味「北朝鮮化」を招き悪循環になるのではと危惧しています。「何か行動をしなければ」、日本のODAに対する提言を有志で作り、政府に提言していきます。今後行っていきたい提言の一部を紹介します。
今後行っていきたい提言は…
・外務省のODA大綱と現場とのギャップを見据え、建前で終わっているものを現場につないでいく司令塔、専門家を入れる。また、外務省は2~3年スパンで変わるのでは専門性を持ちづらいため、腰を据えてできる人を置く。
・JICAに多くいるボランティアから、カンボジアのNGOと一緒に活動できる人材を派遣する。
・日弁連などと連携し、司法のアクセスの確保のため現地の法廷で活動する。また、大学を含めて、研究者にもっと現地の状況について調べてもらい、フィードバックを得る。
「カンボジアだけでなくベトナムやミャンマーに対してどうアプローチしていけばいいか」、今この問いには正解がありません。皆さんとともに長期的な視点で考えていきたいと思います。
友人に人権弁護士がおり、カンボジアで弁護士資格をはく奪されかねない事態になったことがありました。その時は、外務省の取り成しで不本意ながら詫びを入れることで何とか事なきを得て、今は自民党で権力の中枢にいます。そのことに批判はありますが、そうして生き残る人がいるのも大事。怯えている人に希望を持ってもらうために行動していくのが大事だと思います。
堀潤:2001年9月から2008年3月まで日本国際ボランティアセンターでカンボジア事務所代表をされていた、昭和女子大学国際学部国際学科准教授の米倉さん、お願いします。
米倉雪子(昭和女子大学国際学部国際学科准教授):「戦場から選挙へ」、パリ和平協定の時の精神を思い起こしてほしいと思います。地方選挙で当選した女性も、嫌がらせを受けながらも辞めずに頑張っています。そういう人たちが困難な状況の中どういう思いで頑張っているのか、その思いを忘れないでほしい。先ほどのデモ弾圧の映像で、治安部隊は罪悪感があるからヘルメットを被っているのです。クメール・ルージュ(かつて存在したカンボジアのポル・ポト派政治勢力、及び武装組織)もそうでした。フン・セン首相も民主的な体裁を整えた選挙はやろうとしている。日本は今までカンボジアにとっての最大開発援助国として援助をしてきた、その意義を。