ビジネス書のスターが説く、営業の新セオリー ベストセラー作家ダニエル・ピンク氏インタビュー

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新しいセールスコンセプトについて

――日常を振り返って、自分は実はセールスマンだと気づいたことから、今回の書籍が生まれたそうだが、あなたの典型的な1日とは? どんなところが「売らない売り込み」なのか?

私の場合、典型的な1日は2タイプある。ひとつ目は、執筆活動をする日だ。

朝起きると、まず野球シーズン中は新聞で試合結果をチェックする。それから、仕事場である自宅ガレージに向かう。私は午前中に執筆するのが好きなの で、ガレージのドアを閉めると、メールも電話もシャットダウンし、書くことに専念する。1日500ワードというようにその日の目標を達成するまで、ほかの ことは一切やらない。執筆は午前10時に終わることもあれば、午後2時や3時までかかることもある。

書き終えたら、リサーチや電話対応などをする。夕方、運動のためにひと走りしてから、最後にもう一度、書いたものを見直す。これが、典型的な執筆活動日だ。

アイデアを売り込むセールス日は闘いだ

もうひとつのタイプは出張日で、スーツ姿にネクタイを締めて、会社訪問、会議や講演をこなす。ラフな格好で気楽に過ごせる執筆日と比べて、私にとっては闘いだ。10月は特に忙しく、米国内はもちろん、メキシコ、オランダ、イタリア、英国などへの海外出張もある。

ダニエル・ピンク
1964年生まれ。エール大学ロースクー ルで法学博士号取得。クリントン政権下でゴア副大統領の主席スピーチライターなどを務める。フリーエージェント宣言後、世界各国の企業、組織、大学を対象 に講義やテレビ出演を行う傍ら、ワシントン・ポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙などに精力的に寄稿してきた。著書に『フリーエージェント社会の到来』 (ダイヤモンド社)、『ハイコンセプト』(三笠書房)、『ジョニー・ブンコの冒険』『モチベーション3.0』(以上、講談社)などがある。

2タイプのうち、出張日がある種のセールスと言える。直接的に本を売ろうとするわけではないが、自分のアイデアを売り込むことになるからだ。会社や 会議で人々と話し、アイデアを説明し、相手に指摘したことを真剣に受け止めてもらうよう説得しようとする。その意味で、ほぼすべてが「売らない売り込み」 にあたる。

――おそらく、あなたは新しいセールススタイルを身につけているひとりだと思うが、誰かロールモデル的な人物はいるか?

私など、とんでもない。ただ、アメリカ人の例を挙げるなら、意外かもしれないが、ビル・クリントン元大統領だ。

クリントン氏は「同調」が抜群で、ほかの人々の視点をよく理解する。「浮揚力」も持っていて打たれ強い。いろいろと人生の浮き沈みはあるが、いつも何とか戻ってくる。「明確性」についても、物事の仕組みを説明するのが非常にうまい。

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