ビジネス書のスターが説く、営業の新セオリー ベストセラー作家ダニエル・ピンク氏インタビュー

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――本で紹介している具体的なツールは、自分でも試しているのか?

もちろん。たとえば、セルフトークがそのひとつだ。重要な会議の前に、「自分ならできる。自分はすごい!」と言うのは前向きだし、何もしないよりははるかにいいと、リサーチでも証明されている。

ところが驚きなのは、断定形で言うよりも、疑問形で「これができるだろうか」と言ったほうが、もっとよいことだ。

疑問形を使えば、答える必要がある。「こういう会議は前にやったことがあるから、自分にもできる」「準備はきちんとできている」「この点に言及しないといけない」「前回はあまり人の話を聞けていなかったから、今回はもっと聞くことを意識しよう」というように、準備やリハーサルができる。これは自分を奮い立たせる断定形よりも静かな方法だが、はるかに力強い。

拒絶された後の対応でも、セルフトークを実践するといい。次に同じ経験をするときに備えて、その失敗について説明するんだ。「これは個人的なことか」「すべて自分が間違っていたのか」と自問してみると、ほとんどの場合は違う。「こういうことはつねに起こるか」「永久的なのか」と問えば、たいていのことは常時起こるわけでも、永久的に続くわけでもない。だから、私もこの手法はよく使っている。

小さな勝利を重ねていけば、変化を起こせる

――普通の人たちが、新しいセールスのモデルを学ぶのに最適な方法は何か。

最善の方法は、セールスが好きじゃないとしても、それが自分のやっていることの一部だと認識することだ。それから、セールスというのは、めちゃくちゃ外向的になったり、ずる賢くなったりする必要はなく、ほかの人々に貢献することだ、ということも。

新しいスキルを学ぶときにいつも重要なのは、小さく始めること。とにかく何かやってみることだ。たとえば、少しだけ聞くことを意識したり、ほかの浮揚力のテクニックを試したりしてみる。本で紹介したセールストークのテクニックを、自分の仕事に応用してみてほしい。

小さな勝利を重ねていくことは重要だと、本当に思うようになった。小さな勝利があれば、みんな前進していけるからね。

――この本を通して、より多くの人が新しいセールス観を持つことで、世の中にどんな変化が起こればいいと思うか?

理想的には2点ある。 

第1に、古いセールス方法はある意味でだましの手法だと、人々が気づくことだ。そういうやり方はもう通用しない。使おうとするのは時間の浪費だから、やめたほうがいい。そうすれば、人々がないがしろにされることもなくなる。

第2に、私が本の終盤で論じようとしたことだ。最高のセールスの形態は人々に奉仕することだ。ほかの人の人生をよりよいものにするために、何かできることがある。もしも自分の提供するものが、ほかの人の人生をよりよくしないのであれば、それについてきちんと説明することだ。そのほうが、双方のためになる。

つまり、理想はサービスで、まずはほかの人の役に立つために何かを売ることだ。そういう状態になれば、本当にすばらしい。今でもそういう流れは少しずつあると思うが、もっと広がればいい。

(撮影:今祥雄)

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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