かつて、「3列シートは欲しいが箱型の大きなミニバンには抵抗があり、スタイリッシュなデザインも捨てがたい」と考えるユーザーの需要を満たしたのが、ホンダでいえば3代目までの「オデッセイ」や「ストリーム」、トヨタ「ウィッシュ」「プリウスα」、マツダ「MPV」「プレマシー」などの背の低いミニバンだった。
ただ、最近は背が高く、圧倒的に広く多人数乗車に向いているうえ、スライドドアで乗り降りもしやすい箱型ミニバン以外のミニバンの需要は一巡してしまっている。背の低いミニバンの3列目は狭くて実用的ではないケースもあるからだ。ホンダは現行5代目「オデッセイ」の車高を14センチ上げたし、マツダもミニバンの新型車開発からは撤退。トヨタもウィッシュの国内販売を2017年で終了した。
とはいえ、背の低いミニバンのユーザーが背の高いミニバンやステーションワゴンなどに、そのまま移行したいかというとそんなこともなく、クロスオーバーSUVの3列シートは選択肢に入るだろう。
また、マツダ関係者に言わせると「CX-8に他社の箱型ミニバンから乗り換えるユーザーも目につく」のだという。箱型ミニバンは便利だが多人数乗車をそれほどしない人にも、クロスオーバーSUVというスタイリッシュなデザインのクルマの3列シート仕様が魅力に映るケースはあるはず。ホンダも5代目CR-Vでこれらの商機を見込んでいるのだろう。
今後の課題は
記者はホンダが2月下旬に北海道鷹栖町のテストコースで開いた雪上試乗会で、左ハンドルの5代目CR-Vプロトタイプを運転する機会を得た。用意されたのは前述した「SPORT HYBRID i-MMD」というハイブリッドシステムを搭載する仕様だった。
モータージャーナリストや自動車評論家のように詳しいインプレッションは書けないが、ホンダ独自のリアルタイムAWD(全輪駆動)を備えた5代目CR-Vは、記者がまったく走り慣れていない雪道でも安心して走れる車だった(もちろんスタッドレスタイヤは装着)。アコードやオデッセイなどでも評判が高い「SPORT HYBRID i-MMD」は、かなり力強いのに静かでゆったりとした走りで、雪道でもその上質さを感じさせた。普通の街中やワインディング、高速道路でもきっと楽に走れるだろう。
ただ、このハイブリッド仕様の5代目CR-Vには3列シートが当初は設定されない。ホンダの1.5リッターターボエンジンはそれなりにパワフルで、CR-Vの重い車体でも力強く走らせるとは思うが、「SPORT HYBRID i-MMD」の3列シート仕様を望むユーザーはきっといるだろう。
2つのモーターを積むパワーユニットのため、スペースを確保するのは技術的に難しいのかもしれないが、競合となるであろう他車との戦いやすさも考えると、今後の課題かもしれない。
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