糖質制限「老化説」が抱える根本的な大問題

マウス実験では「ヒトの健康」はわからない

ネズミの主食はあくまでも「穀物=低脂質・低たんぱく食」なのです。ネズミは、「穀物=低脂質・低たんぱく食」に特化して、消化・吸収・代謝システムが適合しているのです。

東北大学大学院の実験は単純に、マウスの代謝に合わない(主食でない)糖質制限食(高脂肪・高タンパク食)をマウスに与えて、寿命や老化を観察するという実験にすぎません。

すべての代謝が狂って老化が進み寿命が短くなるのも、言わずもがなです。

食事についてヒト以外の動物を使って実験することがいかに見当はずれなことか。わかりやすい例として、ゴリラを例にご説明します。

ゴリラの主食は「棘(トゲ)の多い大きな蔓(つる)や大きな草」です。

つまりゴリラは超低脂質・低たんぱく食が主食なのです。このゴリラに、糖質制限食(高脂肪・高タンパク食)を食べさせたら、代謝はガタガタになり、マウスやラットと同様、老化も進み、寿命も短くなるでしょう。

東北大学大学院の実験は、わかりやすく言うと、ゴリラにステーキを食べさせるというイメージになります。

ゴリラだと、糖質制限食(高脂肪・高タンパク食)を食べさせることの間違いが、マウスやラットよりわかりやすいのではないでしょうか。

人類のもともとの食性は「糖質制限食」

人類の主食が何であったかはともかくとして、農耕が始まる前の700万年間は、穀物ではなかったことは確実です。農耕が始まる以前の狩猟採集生活では、糖質を取ることはまれにしかありませんでした。

つまり歴史的事実として、農耕が始まる前は人類皆、実質的に糖質制限食を実践していたのです。

また、ヒトの進化の過程で脳が急速に大きくなり、シナプスが張り巡らされるためには、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の摂取が不可欠でした。

EPAとDHAは、地上の植物性食品には含まれておらず、動物性食品にしか含まれていません。

したがって少なくとも、肉・骨髄・昆虫・地虫・魚貝……などの高脂肪・高たんぱく食を、脳が急速に発達した20万年前頃、必要充分な量、食べていたことは間違いないでしょう。

このように人類は本来、高脂肪・高タンパク食に慣れているので、糖質制限食の安全性は高いのです。

マウスやラットやゴリラと、ヒトの食性はまったく異なっているのです。

結論を簡潔に申しましょう。

薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、研究方法として比較的問題は少ないと思います(動物実験自体の是非は置いておきます)。

しかし、本来ヒトと主食がまったく異なるマウス・ラットなどネズミ類で、人類の食物代謝の研究を行うのは、出発点から根本的に間違っている可能性が高いので注意が必要です。

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