訪日客が本当に望んでいる「おもてなし」の姿

実は「不安要素」ばかりのインバウンドの現場

この残念なケースからは、2つの課題が見えてくる。

まず、システム対応の課題である。免税手続きをしたら、メンバーズカードの登録ができなくなるシステムの設計は、店員にとって「やり直し」をしなければならない面倒くさい作業だ。もしスキャンの順番を自由にできれば、とてもスムーズにできるはずだ。柔軟にシステムを構築していれば、店員は嘘をつかなくても済んだし、一組の熱烈なファンである顧客を流出させることもなかっただろう。

2つ目の課題は、システムより本質な課題である、外国人観光客ニーズへの「気づき」だ。

今までの訪日外国人、特に訪日中国人に対する店舗側の捉え方は、「お客様」より「商品を大量に買ってくれる人」であることが多いだろう。何もしなくても爆買いをしてくれるし、こちらから特に何も努力しなくても売り上げが増えている。訪日中国人のニーズを理解しようとしていないのではないだろうか。

訪日客それぞれに目的と楽しみ方がある

現在の訪日中国人は、属性も行動パターンも明らかに多様化している。団体旅行で初めて海外旅行に来る人、アニメの舞台になった町に行って聖地詣でするアニメマニア、半年分の赤ちゃん用品の購入に来る若いパパ・ママ、還暦を迎える親への孝行でよい旅・よい買い物を体験させたい中年、あるいは上述の夫婦のように違う国に何度も訪れ、現地っぽい暮らしを体験してみたい人達……。

それぞれの目的と注目ポイントがあるわけだ。つまり、今まで一括りで見た「中国人」ではなく、自社商品・サービスに、どういう訪日中国人が、いったい何を求めているかを確かめておくことが重要となってきている。

団体旅行で初めて日本を訪れる観光客だったら、中国より安いからとりあえずたくさん買う気持ちが強いだろうが、何回も来日しているリピーターは、買い物自体も珍しい体験から、さらなる付加価値を求めるようになった。今後、リピーターがますます増える一方であり、彼らのニーズを把握する必要性が増してきた。

訪日中国人が、何もしなくても買ってくれる良き時代が終わりつつある。訪日中国人の中から有望なターゲットを見つけ出し、ターゲットごとに、彼らのホンネとインサイト(消費行動のツボ)を引き出すターゲット・マーケティングが必須なのだ。つまり、お客様としてきちんと調査、研究し、顧客として理解しなければならないのである。

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