非合理的でもタロット占いを信じる人の心理

認知バイアスや、占い師の話術の力が大きい

個人的には、占いが当たるのはすべて「認知バイアス」によるものだと思うのですが、それは直接的に「当たる」と思う理由であって、大事なのはその「認知バイアス」によって自分が何を「当たった」と思いたいのか、そこについて考えることだと思います。優秀な「占い師」は、カウンセリングによってその依頼者の願望を引き出し、そこにある拗れをほどいたり、より大きな願望の達成へと助言をしていくものなのではないでしょうか。

実際、本書で上掲の解説を鏡氏がしたあとで、作者はタロットの「占い」を体験します。取材で自分の願望を話してしまうことに躊躇した作者は、「マジの悩み」をいったん隠して「仕事へのモチベーションをキープするのが難しい」と相談します。

個人鑑定をしない鏡氏に代わって、実際に占いを担当するのはバンギ氏。「今の精神状態と仕事」という相談として「占い」を始めるのですが、その結果から作者の「悩み」をまさにズルズルと引き出し、最終的には作者が当初隠そうとしていた「一番の質問ごと」へと到達します。

マンガを読んでいて感じるのは、バンギ氏の話術の巧みさであって、タロットの神秘性ではありません。逆を言えば、タロットの神秘的なイメージを利用して、巧みな話術で相談者の悩みを引き出してアドバイスする、というのがタロットの方法なのかも知れません。

非合理なものを理解する姿勢は危険だ

タロットのほかにも、たとえばツチノコやネッシー、イエティといった「UMA」の存在をめぐって、「UMAがいると信じたい気持ち」「様々なUMAにまつわる伝承」を詰め込んだ回もあります。また「守護霊」や「お墓」といったテーマも第3巻では話題になっています。いずれも、基本的には「疑う」というスタンスを崩さず、でもそれにまつわるいろんなウンチクや疑念との対決が描かれていて読み応えあります。既刊の1巻・2巻でも、パワーストーンやチャクラといったオカルトっぽくて胡散臭いけど、信じちゃってる人が多いテーマについて、「それってどうなの?」というスタンスで問いかける内容になっています。

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なお、もっぱら「信じない」というスタンスの作者に対し、「なんでもわかってしまってる」というスタンスで解説をする「Rさん」なる気功師(?)も登場します。強く納得したい人には、こういうキャラクターの存在はありがたいかも知れません。

もっとも、非合理的なものを理解しようとするのは、詐欺の被害に遭ったり、洗脳を受けたり、精神の安定を失ったりとリスクがある試みではあり、仮に自己責任でも迂闊に足を踏み出さない方がよいことかも知れません。自己責任でと言うにはあまりにも残酷な未来が時には待っている場合もあります。 あと、非合理なものを現実の一部として認める態度は、政治や社会に合理的な議論が期待されないときに存在感を増すもので、現代の世相を反映しているとも言えるでしょう。

いずれにせよ、胡散臭いものを単に切り捨てるのではなく、積極的に理解して自分なりの距離を取りたいと思っている人には強くおすすめできる作品です。

(文:永田 希)

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