「パワハラ保険」の販売が急増しているワケ 中小企業でもリスク意識が高まっている
[東京 26日 ロイター] - パワーハラスメントなどの不当行為に対して、従業員から起こされた賠償請求を補償する保険が売れている。中でも目立つのが中小企業の強いニーズだ。働く人の権利意識の高まりで、訴訟リスクへの認識が中小企業にも浸透し始めていることが背景にある。また、足元で強まる人手不足を原因とする雇用トラブルも、事業者の懸念を強め、保険購入を促している。
2年前と比べると2.5倍以上の伸び
三井住友海上火災保険やあいおいニッセイ同和損害保険を傘下に持つMS&ADインシュアランスグループホールディングス<8725.T>では、雇用慣行賠償責任補償特約と呼ばれる保険契約の販売件数が2017年度、約2万件と前年度比5割超、増える見通しだ。2年前と比べると2.5倍以上の伸びとなる。
雇用慣行賠償はEPLとも呼ばれ、パワハラやセクハラ、不当解雇などを巡り、従業員から企業が損害賠償を請求されることを指す。
これに対し、労働災害で従業員がけがや死亡した場合の賠償責任は、ELと呼ばれる。近年EPL保険が急速に売れ始めたのは、中小企業がそれらのリスクを意識し始めたからだ。
「もともとオーダーメイドのEPLはあったが、海外展開をしている大企業などに限られていた。2011年と2015年に中小企業向けに発売した賠償責任保険に特約として付けたところ、急速に販売が増えた」と三井住友海上・火災新種保険部の大道武志課長は説明する。
損保ジャパン日本興亜は、全国商工会議所の会員向けに販売している業務災害補償プランに昨年10月からEPL特約をつけたところ、今年2月末時点で、同社全体のEPL保険契約件数が前年比で約30倍に増加したという。「企業のEPLへの関心は、非常に高い」と同社の企業商品業務部の中野剛課長代理は語る。