やっと日本代表になれた。次はアジア代表 柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長に聞く

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――今年、企業理念を明文化した「FRWay」という冊子を全社員に配布しました。トップの方針を全社に示すということですね。

グローバルに進出して、関連産業も展開するとなると、われわれはどういう者かを明確にしなければいけない。だから、われわれはこういう方針に従って商売をしていくという「声明文」みたいなもんです。社員もどんどん増えています。たとえば、M&Aでグループ入りした会社の人は、われわれの方針なんて知らないわけですから。

――社員が増えるに従って、大企業病が蔓延し始めているとのことですが……。

ずっと前からですよ(笑)。まずスピードですよね。実行が遅い。それと目の前の仕事しか見えなくなる。でも仕事ってそうじゃないですよね。目の前のことも、1週間後のことも、1カ月後のこともやらなきゃいけない。3年間どういうことをやるのかを考えるには、全社の方針も知らないといけない。でも、そういうことに興味がない。そういう人間に限って、自分の姿を見ようとしないんですよ。自分の姿を見ようとすれば、全体の中の自分を考えるはずですから。ビジネスが自動的に回っていくかのように考えている。でもそれはとんでもないことです。

――それで「再ベンチャー化」をキーワードとして掲げているのですね。同時に「グローバル化」「グループ化」も強調されています。

できれば10年間で売り上げを10倍にしたいと思っていますから、年に20%成長させられるものをつくらないといけない。そのためには、成熟して停滞している日本市場だけじゃなく海外にも出るし、ユニクロだけじゃなく自分たちの強みを生かせる別の業界にも出る。これまでも海外に進出したり、関連業界に出て行ったりしましたけど、そういうのを通して、自分たちがどういう会社でどういう強みを持っているのか、よくわかったというわけです。

将来のビジョンを持たないといけない

――ユニクロは世界中で同一の商品、同一のマーケティングを推進していく。

たとえば、フランスではフランス、イギリスならイギリスの小売業のような商売をしても、海外に出る価値はない。今までグローバル化してきた企業を全部見ましたが、世界共通のグローバルワン経営以外で成功している企業は1社もないんです。

これまでは、社内でも海外事業と国内事業だったんですけど、海外事業をグローバル化すると同時に、日本の事業もグローバル化していかないといけない。われわれは、日本の小売業として、あるいは日本のファッション業として、世界に出て行こうと思っています。

――日本代表としてということ?

われわれは日本企業以上でもないし、以下でもない。日本の企業としての強みを理解してもらえるような企業じゃないといけないと思うんです。われわれもそういう時期に来たんじゃないかなと。最初は宇部市でナンバーワンを目指していた。次は西日本でナンバーワン、それから日本でナンバーワン、その次は多分、アジアでナンバーワン。だったらその次は世界でナンバーワンだなと。

多分それは、単純に量的な拡大ではなくて、それぞれのステージで質的に変えていかないといけないんです。そのためには、今の自分たちはこうだけど、将来こういうふうにしたいというビジョンを持たないといけない。僕らだって最初から恵まれていたわけではないですよ。地方だし、商店街だし、家業だし、零細だし。それでもようやく今、日本代表になっていると思うんです。

――2020年に世界一のアパレル製造小売業になると宣言されましたが、そのときもまだ現役を続けていますか。

多分、引退はできないんじゃないかなと思います。でも60歳から65歳の間でやるのはガバナンスの面かな。日常のチラシチェックみたいなことはできれば勘弁してもらいたいなと思っています(笑)。

(撮影:梅谷秀司)

堀越 千代 東洋経済 記者

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ほりこし ちよ / Chiyo Horikoshi

1976年生まれ。2006年に東洋経済新報社入社。08年より『週刊東洋経済』編集部で、流通、医療・介護、自己啓発など幅広い分野の特集を担当してきた。14年10月より新事業開発の専任となり、16年7月に新媒体『ハレタル』をオープン。Webサイト、イベント、コンセプトマガジンを通して、子育て中の女性に向けた情報を発信している

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