日本は「ベーシックインカム」導入で変わる AI時代到来でBIは欠かせなくなる

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──AI時代の到来とBIはどうつながるのですか。

AIが仕事を奪うとか脅威論がありますが、人間がAIの能力を生かす場面と使い方を正しく規定しさえすれば、怖がる必要は全然ない。今後実現が期待されるAIは習得した学びを他に転用し臨機応変な対応をする、たとえば自動運転をし碁を打ち翻訳もする「汎用型AI」ですが、大量の情報を組み合わせどう総合的に判断させるか、その目的を設定するのは人間です。悪意で人間を攻撃するAIが作られたら危ないけど、そこはもう核兵器と一緒。どこぞの太った刈り上げクンがボタン押さなきゃいいな、というのと同じ。

むしろ懸念すべきは、AIだけが知的に高度な生産活動をするようになると、AIを所有する資本家が経済の絶対的支配者になること。資本家が富を独占し、豊かな社会どころかほとんどの人が仕事に就けないディストピアになってしまう。そこでBIによる強力な再分配機能が必須になります。

何のために生きるのか

──「働かざる者食うべからず」から「働かなくても食ってよし」へ、夢のような大転換が起きる?

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でも、働かなくてもいい世界は単純にユートピアとは限りません。退屈の不幸がある。人間はラクがいいという怠惰な一面もあれば、よきことのために努力したり興味を持ったりする一面もある。何らかの鍛錬、修練、学びを欲するネイチャーが人間にはあるんだと思います。経済活動に人間のかかわる割合が減る分、自己実現なり社会貢献なりのために生きられるようになる。でも何のために生きるか、何がやりたいかを見つけ出すのは案外難しい。それを助ける何らかの機能を国が提供しないといけないのかも。

──国民の6人に1人が貧困で、年々格差が開いている日本こそ、BI導入を本気で考えてもいい?

それはもちろん。戦争放棄をうたう日本国憲法第9条は人類の英知ですが、それに次いでかそれ以上に、BIを1億人規模で導入したら歴史的所産になる。生まれながらの自由と平等を保証するのが民主主義。でも今多くの日本人が教育を受ける権利すら実質的に得られていない。普通に生きていくための経済的平等性を担保するBIは全然非常識じゃないということ。産業革命が人類に新時代を開いたように、AIとBIの両輪が人類を次の新しいステージへ連れていってくれるのです。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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