日本は「ベーシックインカム」導入で変わる AI時代到来でBIは欠かせなくなる

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――財源的には可能なのですか?

計算上、十分賄えます。不要になる国民年金・基礎年金、生活保護の生活扶助費、雇用保険の失業保険費や、“強者の年金”といわれる厚生年金の分を充当する。現在42%の国民負担率を欧州諸国並みの60%へ引き上げ、消費税率は8%から15%にする。

富裕層の富の再分配

本丸は富裕層の富の再分配です。これまで日本の財政改革は消費税率を上げる一方で、法人税減税と富裕層に対する累進課税の緩和をしてきた。強者ばかり優遇し弱者からカネを吸い上げ、あるべき公的機能の逆ばかりをやってきた。世界で日本だけが20年間ゼロ成長である最大の理由がそこにあります。BIで富裕層から貧困層へ富の再分配をすれば、格差が解消され景気もよくなるし、いろんな問題が一気に解決する。そのためにも法人税増税や累進課税の強化、特に金融資産課税が必要です。

──働かない人のフリーライダー(タダ乗り)問題は起きない?

波頭亮(はとう りょう)/1957年生まれ。東京大学経済学部を1980年に卒業、フリーター生活をしながら同大のゼミで経営戦略論を学ぶ。1983年マッキンゼー&カンパニー入社、マレーシアや中国の国家政策作りに携わる。1988年に独立、経営コンサルティング会社XEEDを設立(撮影:今井康一)

これまでいくつかの国や地域で行われたBIの導入実験で、その問題は顕在化しませんでした。ケニアの実験例ではBIが漁網の購入や学費に充てられた。ホームレスを対象としたロンドンの例では、半数の人が家屋に住めるようになり、他にも社会に関与するための職業訓練など投資に回された。

何かしたくても、貧しさから機会が与えられないこと自体が貧困問題の根本的理由。少数のフリーライダーの何十倍、何百倍の人が餓死せず、人としてまっとうに生きる権利を得られるなら、よくなる総量のほうが圧倒的に大きい。GDPがこれだけあるのなら、生きていくための保障くらい弱者にしようよ、というのが私の理念的ポジションです。

──実質的に負担増となる富裕層や企業の反発必至では?

BIには一方で、企業や産業界を活性化するメリットもある。典型的なのが北欧です。60〜70%の高負担で企業も富裕層も高率の税金を課され、消費税率も20%と重い。人口増のボーナスもない。それでも成長しているのは、BI導入以前の段階で再分配が利いているから。

繊維会社がIT企業になろうとしたら従来社員の大半が不要になる。BIが保障すれば解雇規制は大幅に緩和でき、企業は合理的で柔軟な経営戦略を取れる。そもそも労働者の生活保障を企業に負わせること自体、資本主義経済として合理的ではない。企業は法人税を厚く負担して生活保障は国家に移管する。現在企業が抱え込む400兆円もの内部留保は国が再分配したほうが、世の中の景気はよくなるはずです。

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