西武が「ドーム大改修」に180億円投じる真意 球場にVIPラウンジ新設、選手寮には温浴施設

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「特に印象に残っているのがフィリーズのシチズンズ・バンク・パークとダイヤモンドバックスのチェイス・フィールド。シチズンズには観客が試合開始時刻の相当早くから球場に来ていた。球場外の飲食店で過ごし、中に入ってからも楽しんでいた。チェイス・フィールドにはライトスタンドにプールがあり、“ボールパーク”とはこのようなところまで考えるのか、と驚いた。本当に野球を観戦するためだけに球場に来るわけじゃないんだ、と感じました」(視察を行った球団関係者)

現在のメットライフドーム内外には、多くの店舗が並び、イベント数も多い。これらは視察したスタッフの気づきが反映されたものだという。

改修後の3塁側コンコースのイメージ(画像:埼玉西武ライオンズ提供)

西武同様、地元密着の流れからボールパーク化を目指す球団は少なくない。観客動員を伸ばし続けている東北楽天イーグルスや横浜DeNAベイスターズ、北海道日本ハムファイターズも球場を中心としたまちづくりに熱心だ。

ホームゲームがあるのはどのチームも年間70日程度となるため、試合がない日もイベントなどで稼働させ、施設効率を上げることが経営課題にもなっている。

選手ファーストで狙う10年ぶりのV

2つ目の狙いは「選手育成の強化」だ。「チームの強さこそが最大のファンサービスであり、魅力ある選手こそが最大のコンテンツ」をテーマに掲げる西武だが、2008年に日本シリーズを制して以来、10年間タイトルから遠ざかっている。

今回の大改修では、球場・練習施設といった選手周りの環境整備も目玉の1つだ。西武第二球場や2軍施設に観客席を設置し、サブグラウンド・ブルペンを増設することで練習環境を拡大する。

改修後の屋内練習場のイメージ(画像:埼玉西武ライオンズ提供)

さらに室内練習場や選手寮(若獅子寮)を建て替え、寮には温浴施設なども設け若手選手が野球に集中できる環境を整える方針だ。こうした施設整備によって、選手強化や有望選手の流出の阻止につなげる算段だ。

2008年に日本一に輝いた後の10年間は、親会社・西武ホールディングスの経営が不安定な時期と重なる。リーマン・ショックや東日本大震災の影響でレジャー事業が低迷し、筆頭株主・サーベラスから敵対的TOBを受け、2014年に再上場を果たすなど、球団経営の優先順位は必ずしも高くはなかったのではないだろうか。

そうした時期を経て、40周年という節目に生まれ変わることを決意した埼玉西武ライオンズ。大改修で地元に愛され選手に愛される球団となれるかが、再成長のカギとなりそうだ。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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