「頭の回転が速い人」になるための3つの方法 大事なのは小手先ではなく「思考プロセス」

拡大
縮小

しかし、一方で「専門バカ」という表現がある。1つの分野についてはすばらしいが、他のことだとからきしダメで、常識はずれだったりする人のことを指す。このように一芸に通じながら、万芸に通じる人物に成長する人と、専門バカになってしまう人とでは、何が違うのだろうか。

具体的な事象をメタ化する

それは「メタ化できるかどうか」の違いだ。

「メタ」とは、「超~」「高次の~」という意味。つまり、対象の背景や高次の情報、より抽象度の高い情報を「メタ~」と表現するのだ。言いかえれば、その「対象を生み出す、より高次なもの」を指す。「メタ知識」であれば「知識を生み出す知識」、「メタデータ」であれば「データを生み出すデータ」。たとえば「太郎さん」だとすれば、メタ情報として「男性」「日本人」「人間」などが挙げられる。「太郎さん」という具体的な対象に関して、より抽象度を上げた情報がメタ情報である。

1つの分野に関して理解を深めながら、人は日々、具体的な学びを蓄積していく。

たとえば料理人の世界であれば、段取りの仕方、仕込みの仕方、料理を出す間(ま)などがそれにあたる。

「料理は前の料理を食べ終わるか終わらないかぐらいのタイミングで出す」「そのタイミングでちょうど良い温度になるように段取りを組む」

こうした具体的な学びが、

「顧客がもっとも心地よいと感じるタイミングでサービスする」

「顧客を起点として段取りを組む」

というメタ知識に変換されていく。さらにメタ化すれば、

「同じ労力でもタイミングによって効果は倍にもなれば、ゼロにもなる」

『頭の回転を速くする45の方法』書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

「段取りは目的から考える」

という学びにもなる。

普段の仕事で目の当たりにするのは具体的な事象でしかない。具体的な事象をいくら蓄積しても、同じシチュエーションが起こらなければ適用することはできない。具体的な事象をメタ化することによって、あらゆる場面で使える知識となるのだ。

具体的な学びを「メタ化」することで、あらゆる分野に通用する「メタ知識」が手に入る。その分野の一流の人と話をすると含蓄のある話を聞くことができるのは、そのためなのだ。

メタ化のコツはリアルタイム性。目の前で起こっていることを、常に「これはどういう学びになるか」とリアルタイムに考えてみよう。でなければ、すぐに忘れてしまうもの。毎日目の前で起こる具体的な事象を抽象化して蓄積する。これを何年も続ければ、膨大な量のメタ知識が蓄積される。

久保 憂希也 KACHIEL社長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くぼ ゆきや / Yukiya Kubo

1977年、和歌山県和歌山市生まれ。1995年、慶應義塾大学経済学部入学。2001年、国税専門官第31期として東京国税局に入局。飲食店・医療業・士業・ 芸能人・風俗等の税務調査や、外国人課税事務、確定申告関連事務を担当。 2005年、東証一部上場企業に入社。新規事業・経営企画・事業戦略・M&A・事業提携を担当。在籍した4年弱の間に13のプロジェクトを成し遂げる。2007年、会社全体の営業利益の3分の1(約63億円)を計上する子会社の取締役に就任。グループ全体26社・3,000人の部下を統率する。2008年に独立し、経営全般に関するコンサルティング事業を行う株式会社InspireConsultingを設立。2016年、株式会社KACHIELの代表取締役社長に就任。

この著者の記事一覧はこちら
芝本 秀徳 プロセスデザインエージェント 代表

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しばもと ひでのり / Hidenori Shibamoto

大阪府出身。プロセス設計の技法を活かし、人と組織の実行品質を高めるコンサルタント。ソフトウェアベンダーにおいて大手自動車部品メーカー、 大手エレクトロニクスメーカーのソフトウェア開発にプロジェクトマネジャーとして携わる。 現在は一部上場企業をはじめ、多様な業種を対象に、プロジェクトマネジャー育成、ITシステム構築支援、戦略構築から実行のモニタリング、 問題解決まで、人と組織の実行力を高めるファシリテーション型コンサルティングを、代表を務めるプロセスデザインエージェントで展開している。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT