仕事がイケてない人は提案の作法を知らない 「驚き」「安心」「納得」を押さえていますか

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そこで、提案者が伝える要素として大事になるのが、「自分たちが提供できる価値(バリュー)」です。バリューの内容は、他社でも顧客企業の担当者自身でもなく提案者のわれわれがなぜこの提案を行うのか、自社・自分の得意領域や、顧客に絶対に約束しているポリシーなどの要素を統合したものになります。

「頼む理由」を醸成する

わかりやすい例だと、宅配ピザの「30分以内に届ける」というポリシーです。ほかにもピザデリバリーがある中で、ピザ自体の味や価格的な安さでもなく、この会社がこだわったのは、注文を受けてから届けるまでの「時間」でした。お腹をすかせた顧客には、多少の安さよりも「時間」というのは、より優先順位が高く、注文する「理由」につながっていきます。

そして、バリューの提示は、発注者側にとって「頼む理由」の醸成にもつながります。たとえば、提案の場面でよくあるのが、「担当者」と「決裁者」が分かれていることです。特に自分の経験が少ないうちは、決裁者に直接アプローチするのは限界がありますから、多くの場合は担当者と相談する形になるのではないでしょうか。

こうした場合、顧客の決裁者は、担当者に対して、おそらく「なぜこの会社に頼むの?」という理由を聞いてくると思います。その時に、こちらが「GISOV」がしっかり整った提案をしていれば、担当者が相手の社内で「わが社が達成したい目標を実現するには、○○を大事にし、強みを持っているこの会社に発注したほうが、投資対効果は高いんです」といったように、われわれを推薦してくれる提案者・説得者に変わっていくのです。

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「GISOV」という提案の「型」には、もう一点、大事なメリットがあります。それは、あくまで顧客の言うことそのままに仕事を遂行するのではなく、「自社の誇り(われわれにしかできない理由)」と「顧客の実現したいこと」が重なる領域で提案をするため、顧客から仕事を「安請け合い」することがなくなることです。つまり、仕事を受けるうえで自社の利益が確保されることになるのです。

この視点は、中長期で顧客の発展を考えるときには非常に重要になっていきます。なぜなら、一方的に発注者の要求に応えて身を削っていたら、財務的にもいずれ「期待に応えられなくなる日」が訪れます。顧客にとっても頼りにしていたパートナーを失い、急きょビジネスの方向性を変えざるをえなくなります。場合によっては、ビジネスの前提条件から変わってしまうかもしれません。

そうならないためにも、「顧客と共に栄える」という視点は、ビジネスを持続発展するうえで非常に重要になってきます。

村井 庸介 経営アドバイザー、Smart Contract最高戦略責任者

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むらい ようすけ / Yosuke Murai

慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、野村総合研究所に入社。通信業・製造業の新規事業、経営計画策定などの経営コンサルティングに携わる。その後、リクルート、グリー、日本アイ・ビー・エムなどで、法人営業・戦略企画・人事の仕事を歴任。2015年からはメガネスーパーの企業再生で新規事業立ち上げや事業提携を通じて同社黒字化に貢献。現在は、仮想通貨・ブロックチェーン関連の事業開発コンサルティングを行うSmart Contract株式会社Chief Strategy Officer、コミュニティ運営専門会社の株式会社女子マネ取締役など複数のベンチャー企業経営に関与。プライベートでは、大学時代にNPO法人で立ち上げた就職活動支援及び教育事業「ベストキャリア」を通じて累計約500人の大学生のキャリア形成支援に従事。

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