日本が現金払い主義からまるで脱せない理由 キャッシュレス化が進む世界から周回遅れ
政府も重い腰を上げて現金流通からキャッシュレス化の推進に舵を切った、と言っていいのかもしれないが、10年で4割ということは10年を経過しても中国や韓国、米国に追いつけないことを意味している。
日本はなぜ現金流通にこだわるのか。日本には偽札も少ないし、現金を持ち歩く際も海外ほどのリスクはない。長年にわたって、現金流通が便利で、楽だったわけだ。とはいえ、現在は昭和ではなく、平成であり、その平成も間もなく終わろうとしている。
近年、急速に電子マネーが普及しつつある中国やインドでは、スマホの大流行によって電子マネーなどが急速に発展したことはよく知られている。飲食店やスーパー、レンタルサイクルにある「QRコード」に、自分のスマホをかざすだけで、瞬時に本人の銀行口座からダイレクトにマネーが引き落とされる仕組みが定着しつつある。
現在、中国にはアリババの「Alipay(アリペイ)」、テンセントの「WeChat Pay(ウィチャットペイ)」が「QRコード」を使った決済システムを展開しており、急速にそのユーザー数を増やしている。中国のスマホ人口は7億人とも言われているが、都市部での普及率は100%に近いとさえ言われる。誰もが保有しているスマホだからこそ、キャッシュレス化があっという間に定着したともいえる。
周知のように、技術的には通販大手の「アマゾン」がはじめたレジのないコンビニ「アマゾンゴー(Amazon GO)」が、米国で実験店舗を展開しており、その技術力の高さが評価されている。日本に進出してくるのも時間の問題だろう。
「現金流通」は非効率で危険!
現金流通が主流の経済と電子マネーやクレジットカードが主流の経済とでは、何が異なるのだろうか。たとえば、キャッシュレス決済比率2%のスウェーデンと比較してみると、どんな点が異なるのか。
まずは、銀行のATMは不要になり、コンビニのATMも不要になる。銀行も、店舗の中に巨大な金庫をつくる必要がなくなり、セキュリティーの度合いも格段に高くなる。米国の経済学者「ケネス・S・ロゴフ」は、著書『現金の呪い――紙幣をいつ廃止するか』の中で、現金は地下経済の決済手段として機能しており、地下経済増殖の元凶になっている。さらに、世界的に現金の流通が増えたことで貧困が増えており、格差社会の進行に拍車をかけている存在として、高額紙幣の廃止を訴えている。
インドは、同氏の提案をそのまま実行して当初は混乱したものの結果的に地下経済を封じ込め、電子決済を飛躍的に増やすことに成功しつつある。
さらに、注目したいのは中央銀行が現金を印刷する必要がなくなることだ。1万円札1枚を印刷するのにかかるコストは22円程度かかるそうだが、その額も馬鹿にできないし、500円硬貨などコインの鋳造コストはもっと高い。
そもそも現金決済には無駄が多すぎる。現在、日本企業の製造現場はミリ単位の合理化を延々と続けているが、その一方で経理などのバックヤードは、相変わらず昭和時代の非効率なビジネススタイルを守っている。給与の支払いや取引先への支払い、海外送金をはじめとして、仕事のスタイルそのものを変えていこうとしない。
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