北千住・西巣鴨の「460円では安すぎる」名銭湯 東京「戦前築の銭湯」2軒を360度カメラで探訪

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最初に向かったのは、北千住駅から徒歩15分ほどの「タカラ湯」だ。北千住一帯は銭湯のゴールデントライアングルと言われ、「キング・オブ・銭湯」と言われるほど建物が立派な「大黒湯」や、江戸東京たてもの園に移築された「子宝湯」など銭湯建築の名作が多い。

タカラ湯の創業は1927(昭和2)年。当初は荒川土手近くにあったが、1938(昭和13)年、道を挟んだ現在の場所に建て替えられた。そのとき、風呂場・脱衣場を設けてもまだ土地に余裕があったために、造られたのが池のある立派な日本庭園。

「祖父が庭師のような仕事もしていたらしく、こんな本格的な庭を造ったようです。ところがその後すぐに祖父は亡くなり、祖母とまだ若い父が切り回すように。当時は大変だったようですよ」と現在の主人の松本康一さんは語る。

男湯脱衣場は庭園に面しており、全面ガラス戸で縁側に出ると池のニシキゴイを眺められる。新潟・山古志産のニシキゴイには60年ほども長生きしたものもいたという。庭木は浅草の植木市で入手するなどして年々充実させ、季節ごとに花が絶えないように祖母が丹精していたと松本さんは語る。

一方の女湯には、男湯のような立派な庭はないのが残念だが、洗い場も脱衣場も男湯より広くゆったりとしている(注:毎週水曜日のみ男湯と女湯が入れ替わります)。

タカラ湯は縁側からの景色が美しい(編集部撮影)

家一軒と同等の価値がある彫刻も

タカラ湯の見どころは庭ばかりではない。正面入口上の七福神が宝船に乗っている彫刻は、柴又帝釈天門前の園田仏具店の園田正信作で、これだけで家一軒が建つほどの価値があるほどだとか。

1988年には洗い場、風呂を改装。中普請と言われる改装は定期的に必要であるが、この時に受け付けを番台(入口近くに設置された、男湯と女湯のどちらも見渡せる台)式からロビー式に替え、ロッカーも導入。

日本庭園とともに、タカラ湯で代々受け継がれている伝統は薬湯。以前はにがりを入れた塩湯で少々のケガはそれで治ってしまうほどだったとか。今は生薬を入れた薬湯のほか、電気湯、ハーブ湯、ゲルマニウム温泉などさまざまなお風呂があるのを特徴にしている。

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