「バイトは塾と風俗」、21歳女子大生の絶望感 「奨学金」は父親の生活費に消えている

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「大学の友達から、それはおかしいと聞いて、私の奨学金を父親が使っていることは普通の家庭ではありえないことは自覚しています。でも、父親は怖い。なにも言えないし、我慢するしかない。将来的に全部私の借金になるけど、もう仕方がないってあきらめています。卒業して保育士になっても、とても返済できない金額ってこともわかっています。どうにもならないです」

あきらめ切った表情で、吐き捨てるように言う。奨学金だけではない、父親からはたまに電話がきておカネをせびられる。先々月は風俗を始めておカネの余裕があり、父親の口座に10万円を送金した。当然、父親は彼女が経済的に追い詰められ、風俗嬢をしていることは知らない。

ずっと冷めた家庭だった

奨学金が親の家計に組み込まれ、困窮する彼女が性風俗で働く現実は普通ではない。保育士免許を取得するだけなら、上京する必要はなかったが、どうしても家を出たい事情があった。

横暴で自己中心的な父親に病弱な母親、ずっと冷めた家庭だった。中学生のときに起こった母親の病死で、家族の中に深刻に亀裂が走った。父親に対する距離感と嫌悪感を語ってから、亡くなった母親の話になった。彼女は第一印象から年齢より大人びたイメージがあったが、家族を頼ることができないから精神的にも経済的にも自立し、自分自身が置かれた厳しい現実を理解しているからだった。

「お母さんは肺炎を合併症で起こして、結局亡くなった。お母さんは子どもの頃から入退院を繰り返していたから、一緒に過ごした記憶みたいなのはなくて。子どもの頃から父親のことも母親のことも嫌いではなくて、好きで信頼をしていたけど、お母さんが亡くなってから妹だけしか信用できなくなった。お母さんが亡くなったとき、自分でもわからないけど、全然悲しくなかった。本当に涙も出なくて」

亡くなる1カ月前、父親から「お母さんとはしばらく会えないよ」と言われた。いつもの入院と思い、心配することもなく、部活と試験勉強をしていた。「危篤」の知らせが入った。

「死んでしまうほど状態が悪いなら、私と妹になにか言ってほしかった。でも言ってもらえなかったってことは、別に私とか妹とか、そこまで気にされる存在でもないのかなみたいな。悲しくないって言ったらうそだけど、実感が湧かぬまま、お葬式ではみんな悲しんでいた。親とか、母方の家族とか祖母とか。私1人だけ、気丈な感じになって疎外感がありました。今思えば、母親の死から家族に絆みたいなものはないと悲観するようになったし、たぶんそれは現実で間違っていないと思う」

母親の死から数カ月後、父親の不倫が発覚した。数年間に及ぶ関係という。妹が不倫相手とのメールを見つけ、亡くなった母方の祖母に父親の不倫を話してしまった。それから祖母は2人の孫に父親を非難し続け、父親は母方の祖母を毛嫌いした。母親が死んでから父親は娘を突き放すようになり、時折「おまえら死ねばいいのに」みたいなことを言った。

高校時代。祖母と父親に間に挟まれた彼女は家族同士の悪口、罵り合いを聞き続けた。あなたの父親はロクでもない人間、あのクソババア……。家族など、なにも信用できない関係と確信するようになった。妹を実家に置いていくことだけは気がかりだったが、高校を卒業したら進学を口実に地元から逃げることに決めた。

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