「都市型仏壇」が売れるようになった発想転換 最初の商品はわずか3台しか売れなかった

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「アッサム」は税込み43万2000円(写真:八木研)

その後も、ヒンジはマグネットに変わって軸がなくなり、取り外しも可能に。リビングにも置いても違和感のない床置き型仏壇として進化を重ねており、「アッサム」という商品が代表的なものです。

こうして開発を進め、最高級のもので200万円の仏壇も製作しました。「200万円の仏壇をお店に仕入れてもらったときはうれしかったですね」と八木社長。まさに「現代仏壇」の価値を認められた瞬間でした(なお現在では、500万円の最高級仏壇「プローヴァ」もラインアップされています)。

お客様の心に寄り添う営業を

八木研の展開する現代仏具専門店「ギャラリーメモリア」では、カウンセリングタイプの接客が特徴です。悲しみに包まれて仏壇を買いに来る顧客に対し、その心に寄り添う接客を心掛けています。

接客の様子。悲しみに包まれて仏壇を買いに来る顧客に寄り添うように心掛けているという(写真:八木研)

「お客様が仏壇をお求めに来られて、お好みのものを見つけてホッとしてお帰りになる。これから長く一緒に暮らす仏壇を見つけるお手伝いができれば最高です。品質には徹底的にこだわり、仏壇内を懐中電灯で照らし、どんな小さな傷も見逃さないように心掛けています。感動の共有のために、私たちも自己革新していかなければならないと思っています」と八木社長。

この自己革新の精神から、異業種の人との交流にも積極的です。最近売れ筋の「壁掛けタイプ」も、お付き合いしている建築業者のアドバイスから生まれました。「カウンターキッチンの上が空いているよ」と言われたのがきっかけで、開発に着手。奥行18.5cmで場所を取らない壁掛けタイプの仏壇「ライフ」が誕生しました。

カウンターキッチンにも違和感なく収まる「ライフ」は税込み21万6000円(写真:八木研)

40年前の新しい仏壇開発当初は、「文化や習慣を変えることは難しい」「新しい仏壇を提案した会社は倒産する」などと言われたそうです。それでも、時代の流れを読んで都市型仏壇の必要性を信じ、自己革新を続けました。その結果、リビングに合うお洒落な仏壇からインテリア性の高い壁掛けタイプまで、その数なんと216種類を開発。その高い技術を活かし、最近は旅館用家具も発売しています。

自己革新でお客の気持ちに応える、その姿勢をずっと持ち続け、日本人の魂に末永く寄り添ってほしいと思いました。

最後に、仏壇とはちょっと縁のないお笑いの話です。実は、八木研にはドランクドラゴンの塚地武雅さんが勤務していたことがあるのです。

「退職を希望して私のところに来たときには、『笑いの世界の芸能人で成功するのは難しい』と、こんこんと説得しました。いま思うと恥ずかしいですね」。八木社長の誠実なお人柄が伝わってくる微笑ましいエピソードでした。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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