津波から命を救う「救命艇シェルター」の正体 25人も乗れて価格は800万~900万円

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ミズノマリンが開発した救命艇シェルター(写真:ミズノマリン)

2012年4月、スマトラ島沖でマグニチュード8.6の激しい地震があり、南国の楽園タイのプーケットにも津波が押し寄せました。

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津波警報が発令され、人々は一斉に高台に向かって避難を開始。たまたま当地に滞在していたミズノマリンの水野茂社長も、いつ津波が来るかもしれないという恐怖の中、現地の人々とともに高台を目指しました。東日本大震災の記憶も蘇り、「いま津波が来れば、自分も含め、ここにいる人々はみな助からない」と大混乱の中で思いました。「でも、もしここに救命艇シェルターがあれば、どんなに安心だろう」 もともと救命ボートの検査と整備が専門の水野社長は、痛切にそう感じたそうです。

そして、津波による被害の低減を目指し、救命艇シェルターの開発を決意。種々工夫を重ね、2013年に25人乗り全閉型第1号艇、2016年に同第2号艇を開発しました。Gデザイン賞も獲得しています。ただ価格が800万~900万円と高く、なかなか普及に至らないのが悩みの種です。

わが社は「船のお医者さん」

ミズノマリンは、創業約30年。大阪府豊中市に本社を置き、プレジャーボート(海洋レジャー用船艇)のマリンエンジンの整備と大型船に搭載されている救命艇の検査が、同社の2本柱です。

「言わば、船のお医者さんです。関西で、マリンエンジンの整備と救命艇の検査を専門にしているのはわが社だけです」と、水野社長。スタッフは約30人。うち8人が外国船救命艇の検査資格を持つ技術レベルの高い会社です。

マリンエンジンと車のエンジンの整備はどう違うのでしょうか。「エンジンは燃料を燃やし、熱を発します。そこは同じです。ただマリンエンジンは、その冷却に海水を使います。金属の中に海水を入れること、そして水の抵抗の中を進むわけですから、車のエンジン以上に整備が必要なのです」(水野社長)。

日本では海外のエンジンが数多く使われています。従って整備も、国産エンジンの対応だけでは不十分です。その点同社は、ボルボ、キャタピラーなど海外メーカーの代理店として、海外マリンエンジンの修理も得意としているのが強みです。

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