年金を75歳までもらえなくなるって本当? 日本は受給開始年齢を自由に選択できる制度

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​日本の年金は、平成16(2004)年改正により保険料が固定され、その保険料の範囲内で給付が行われるようになった(図上)。ここでもし、いわゆる「支給開始年齢の引き上げ」で将来世代の1人当たり生涯給付額が減額されたとすると、年金の収支バランスは崩れる(図中)。そこで、将来世代の給付減額分を現在の高齢者が給付として受け取ることにより、収支のバランスが取られる(図下)。

支給開始年齢の引き上げを主張する論者と年金の世代間不公平を言い続けてきた論者はけっこう重なる。しかし、世代間不公平論者が「将来世代より得をしている」としてひとしお憎んできた団塊の世代にとって「支給開始年齢の引き上げ」は実に好都合な話だ。このように、ちょっとコミカルな主張の混乱が起こっているのである。

75歳へ選択年齢を拡大

この2月にメディアで年金の話が盛り上がったのは、「高齢社会対策大綱」(以下「大綱」)が2月16日に閣議決定されたからである。この「大綱」の中には、「年金の受給開始時期は、現在、60歳から70歳までの間で個人が自由に選べる仕組みとなっている。このうち 65歳より後に受給を開始する繰下げ制度について、積極的に制度の周知に取り組むとともに、70歳以降の受給開始を選択可能とするなど、年金受給者にとってより柔軟で使いやすいものとなるよう制度の改善に向けた検討を行う」とあった。

「大綱」は高齢社会対策基本法(1995年)に基づき、1996年に初めて作成され、今回は3回目の見直しである。前回は、民主党政権下の2012年9月に閣議決定されている。そこには、「社会保障・税一体改革大綱では、“所得比例年金”と“最低保障年金”の組み合わせからなる一つの公的年金制度にすべての人が加入する新しい年金制度の創設について、国民的な合意に向けた議論や環境整備を進め、引き続き実現に取り組む旨等が盛り込まれた」などの文言があった。この5年ほどで、民主党政権下の大混乱を乗り越えて、地に足の着いた年金改革論が大きく前進したことを感じさせる。

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