トヨタ「ルーミー/タンク」が大健闘する理由 ハイブリッド車がないのに月販1万台超

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発売当初、トヨタはルーミー/タンクの月間販売目標を計7500台としていたが、2017年は月間平均で約1万2400台を売った。これはトヨタの事前想定を大きく上回ったに違いない。

販売の現場では、「トヨタがスズキ『ソリオ』を潰しにきた」とも(撮影:尾形文繁)

ルーミー/タンクの登場前後に自動車販売の現場で話題になったのが、「トヨタがスズキ『ソリオ』を潰しにきた」という話だ。もともと軽自動車「ワゴンR」の登録車バージョン「ワゴンRワイド」を源流とするソリオは、現行4代目が2015年8月にデビュー。ルーミー/タンクと近い全長3710mm×全幅1625mmというコンパクトな車体ながら、全高1745mmという背高なスタイルでこれも電動の両側スライドドアを備える。車両本体は145万円台からの設定で価格帯もルーミー/タンクとバッティングする。

経済性と実用性に優れたコンパクトカーという鉱脈

ソリオは2016年で月間平均約4000台を売ったスマッシュヒットモデル。スライドドアは大きく身をよじらずに乗り降りしやすく、駐車スペースで隣に停まっているクルマや壁などに開けたドアをぶつける心配が少なくなる。ルーミー/タンクもそうだが、ソリオも前席から後席の行き来がスムーズなウォークスルーの室内空間にもなっており、極端な話、運転者や助手席の乗員も後席のスライドドアから両側へ乗り降りできる。

背が高いスライドドアを備えたモデルが人気を博している(撮影:尾形文繁)

軽自動車でもホンダ「N-BOX」やダイハツ「タント」など、同じく背が高いスライドドアを備えたモデルが人気を博している。経済性と実用性に優れたコンパクトカーとしてソリオは1つの解を見いだしたと言える。トヨタの真意はもちろん明らかではないが、この鉱脈に目をつけて対抗馬を出したというふうには映る。

トヨタはかつてホンダのミニバン「ストリーム」に似たスタイルの「ウィッシュ」を、同じくホンダのコンパクトミニバン「フリード」とも真っ向勝負になるシエンタをそれぞれ後から出し、そのブランド力と販売力で圧倒するなど、しばしば王者の強さを見せてきた。ソリオの2017年月間平均販売は4100台、ルーミー/タンクは同1万2400台だったので、トヨタはここでも後発ながら競合の約3倍の台数を売り、面目躍如を果たした。

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