トヨタ「ルーミー/タンク」が大健闘する理由 ハイブリッド車がないのに月販1万台超

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一方、ダイハツやSUBARUの親戚車も含めてルーミー/タンクが、ソリオの購入見込みユーザーを大きく奪ったということでもない。ソリオ自体の販売台数はさほど落ちていないからだ。ルーミー/タンクのデビュー当時、あるトヨタ系販売店の営業担当者は「中にはソリオと比較検討されるお客様もいらっしゃいますが、目立って競合している感じはありません」と話していた。

新たなニーズを掘り起こした

いまや軽自動車は新車販売の中で、その販売比率が4割に迫ろうかというほど人気が高まっている。ただ、その主力メーカーとしてのスズキやダイハツは小型車が中心で、トヨタのほうが想定的なブランド力は圧倒的に強く、販売店が抱えている顧客数も多い。トヨタはルーミー/タンクの投入によって月販1万台以上を売る新たなニーズを掘り起こしたといえる。

日産自動車はこのカテゴリに対抗車種を投入するほど日本市場での販売には積極的ではないし、ホンダは軽自動車で絶好調な「N-BOX」のニーズを食ってしまうことになるので、やはりここには当面参入してこないだろう。トヨタはもともと十分勝算を感じていたのだろう。

トヨタ系の販売現場でセールスマンに聞くと、「ルーミー/タンクは非常に売りやすいクルマ」という評価が多い。たとえばハイブリッド専売車である「アクア」のSグレードにHIDヘッドランプとサイドバイザー、フロアマット、カーナビを装着すると、支払総額は約230万円となる。一方でルーミーのGに同じようなオプションを装着した支払総額は約200万円。値引き条件はモデルの古いアクアのほうが圧倒的に良いと見られるが、ルーミーのほうが支払い負担は小さい。

オーソドックスなハッチバックスタイルのアクアより、後席スライドドアでトールスタイルのルーミー系の居住性に魅力を感じるユーザーも少なくないようだ。アクアも発売から6年が経ってもいまだ乗用車ブランド通称名別販売ランキング上位の常連で、ハイブリッド車の魅力が薄れてはいないだろう。とはいえ、ルーミー/タンクの大健闘はコンパクトカーの市場においては、ハイブリッド車が絶対的な神通力を持たなくなってきつつあることを示唆しているのかもしれない。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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