日本の官僚が「ねつ造・改ざん」を始めた根因 官僚システムに大きなひずみが生じている
そのデータの原典は前述した『平成25年労働時間等総合実態調査』で、1月29日の安倍首相の答弁はこれをベースとしたものだった。
そして2月14日に安倍首相はこの答弁を撤回し、加藤勝信厚生労働相は2月19日に衆議院予算委員会で「(データの使い方が)不適切だった。深くお詫びする」と陳謝。2月28日にはとうとう、裁量労働制は働き方改革関連法案から除外された。
いったい何種類の文書があるのか
データのデタラメな取り扱いは、何も厚生労働省だけとは限らない。森友学園問題で揺れる財務省も、国有地売却に関する決裁文書の取り扱いがデタラメだった。
3月7日に開かれた野党6党によるヒアリングでは、決裁文書の原本の所在が問題になった。その前々日、立憲民主党、希望の党、社民党、自由党から計5名の議員が大阪の近畿財務局に出向いたが、事前に「近畿財務局にある」とされた原本がすでに大阪地検に任意提出されおり、その事実を本省が把握していなかったことが判明した。
【3月9日10時16分追記】記事初出時、「その前日、立憲民主党、希望の党、民進党、社民党、自由党から各1名の議員が」とありましたが、「その前々日、立憲民主党、希望の党、社民党、自由党から計5名の議員」に修正しました。
しかもこの時に入手した6枚の「調査書」には、以前に財務省が国会に提出して野党が入手した文書には入っていなかった「印」が記されていた。
「いったい何種類の文書があるのか」。野党議員が騒然となるのも当然で、今回の問題は3月2日の朝日新聞が、森友学園による国有地購入に関して財務省が作成した決裁文書について「契約当時のものと国会に提出されたものと異なる」と報じたことが発端。同紙によると、契約当時の決裁文書にはやり取りを時系列で記した箇所や「特例」などの言葉があるという。
仮にこの報道内容が事実だとすれば、財務省による隠蔽行為が疑われる。国家に対する重大な背任行為だ。
これについて財務省の担当者は「すでに司直の手に委ねられている」と述べ、三権分立を盾に野党の追及をかわそうとしている。その頑なさは憲法が衆参両院に認めた国政調査権をすら否定しかねないほどだ。
そしてその姿勢は財務省に限らない。 厚生労働省もまた3月4日に各紙が一斉に報じた、 裁量労働制の不正適用で局長による特別指導を受けていた野村不動産の社員の 過労自殺事案で、どのような指導内容だったかなどについて「個人情報にかかわる問題」 として回答を拒否している。
「財務省は森友学園問題で『司直の手に委ねた』と真実を隠し、 厚生労働省は過労死問題で『個人情報』 を理由に、野党がどのような質問をしても回答を拒否している。 この国の行政責任はいったいどこにあるのか」
これは毎日のように開かれる野党のヒアリングでため息とともに聞こえてくる言葉だが、官僚が保身に走ろうとする気持も理解できないわけではない。昨年の森友学園問題では「文書はない」と言い切って安倍昭恵夫人を守った佐川宣寿理財局長(当時)が国税庁長官に“抜擢”された例がある。9月の自民党総裁選で3選すれば、安倍政権はこれから3年以上続くことになるが、その間このひずみは続くのだろうか。
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