日本の官僚が「ねつ造・改ざん」を始めた根因 官僚システムに大きなひずみが生じている

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数字の出典となった「平成25年労働時間等総合実態調査」では裁量労働は実際に働いた時間(9時間16分)とする一方で、一般労働には1カ月の最も残業時間が長い労働時間の数字(9時間37分)を記載していたのだ。しかも一般労働では残業時間に一律に8時間を足していたが、勤務時間は事業所によって異なり、一律に8時間というわけではない。そもそも計算根拠が異なるうえ、こじつけで比較していたのだ。

それにしてもなぜデータが捏造されたのか。厚生労働省は「消えた年金記録事件」や「C型肝炎訴訟」などずさんなデータ管理や隠蔽で、これまで幾度も問題を起こしてきた。そもそも厚生労働省自体がそうした体質なのか。

官邸の結論が先にあった

「確かに『消えた年金記録事件』などは厚生労働省のずさんさが原因だった。しかし今回はちょっと違うと思う」。希望の党の山井和則衆議院議員はこう述べる。山井氏は民主党政権時に厚生労働大臣政務官を務め、長妻大臣の下で「消えた年金記録問題」などを担当した経験を持つ。

「まずは『裁量労働の方が一般労働よりも働く時間が短くなくてはならない』という官邸の結論があったのではないか」

山井氏は、官邸の意向を直接的あるいは間接的にくみ取った厚生労働省が都合のいいデータをあてはめた可能性を指摘する。今回の労働法制改革の発端は2013年6月14日に閣議決定された『日本再興戦略』で、「企画業務型裁量労働制を始め、労働時間法制について、早急に実態調査・分析を実施し、本年秋から労働政策審議会で検討を開始する。ワーク・ライフ・バランスや労働生産性向上の観点から総合的に議論し、1年をメドに結論を得る」として「労働時間法制の見直し」をうたった。

さらに産業競争力会議の「雇用・人材分科会」は「日本型新裁量労働制」の導入を提言したが、働き方を決めたこの会議には、労働者の代表が参加していなかったという欠陥があった。

「まさに働く人の意見など入っていないずさんなもの。それでも閣議決定がある以上、官僚はこれに従わなければならない。そこで、とんでもない矛盾が発覚した」。こう述べるのは、立憲民主党の長妻昭代表代行。「消えた年金記録問題」を追及した長妻氏は「ミスター年金」の異名をとり、民主党政権時には厚生労働相を務めている。

「実は厚生労働省は2月7日に、われわれのところに『1か月の一般労働者の1日の法定時間外労働を平均した実績データ』を持ってきたが、これには『15時間超』とする事業所が9つもあった。勤務時間を8時間とすると平均して1日に23時間超働いたことになり、いくらなんでも多すぎると指摘した。その数字はおそらく『1か月の平均の残業時間』ではなく『1か月の中で最多の残業時間』だったのではないか」

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