喫煙と肺がんの実はよく知られていない関係 タバコは一体何が体によくないのか

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若くてタバコを吸っていない人は、たいてい吸った空気の95%以上を吐き出せます。ところが、80歳を超えてタバコを吸っている人は、半分くらいしか吐き出せません。

60歳くらいになると、「なんだか階段で息が切れる。年のせいかな」といった症状が出てきます。これは年のせいではなく、空気を吐けなくなっているために、空気の交換がしにくくなっているからです。

COPDを知らない人は加齢のせいと思いますが、タバコを吸っていたための病気なのです。タバコでは肺ガンにならないとすでに述べましたが、このCOPDには、すべての喫煙者がかかります。

患者数は多いのにあまり知られていない

COPDの恐ろしいところは、なかなか死ぬことができないことです。まるで首を弱い力で絞められるような状態で5年も10年も生きていく。思うように呼吸ができず、酸素吸入をしながらよたよた歩く。

そんな老後でいいですか?

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そのうちに誤嚥性肺炎を繰り返して何度も救急車で搬送され、最後はガリガリにやせて亡くなります。COPDは日本人の死因の第10位で、男性では8位です。

しかし、その順位のわりには注目されていません。現在、日本国内でこの病気の患者は、700〜800万人といわれています。それほどいるのに、なぜ有名ではないのでしょうか。

それは、患者のほとんどが「年のせいだ」と思って病院に行かないからです。COPDが「急を要さない病気」と思われていて、優先度が低くなっているのです。そのために、患者のみなさんはCOPDと診断してもらえません。

COPDの患者さんが最後に肺炎で死んだ場合、死亡原因を「肺炎」と書くことがあります。これを鑑みると、COPDの死因ランキングは男性で6位くらいに上がるのではないでしょうか。

私は、COPDが世の中に知られていない理由のひとつは、言葉が悪いからだと思っています。「COPD」とは、いかにもむずかしい言葉であるためです。現在、COPDの治療を受けている人は、日本で50万人くらいでしょう。早く気づいて、残りの人生を少しでも豊かにしたいものです。

奥仲 哲弥 山王病院副院長

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おくなか てつや / Tetsuya Okunaka

1959年埼玉県生まれ。東京医科大学卒業。医学博士。山王病院副院長、呼吸器センター長。禁煙の活動に積極的に関わり、関連書籍も多数あり。小学生や高校生の子どもを持つ父親を対象にした禁煙啓蒙活動も行っている。専門は肺がんの外科治療。「サンデージャポン」(TBS)などテレビでも活躍中。

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