このようなお題を出す企業は、グループワークを通じて学生の気づきを促進し、自社理解を深めたいと考えているのだろう。この手のグループワークに対する対策は、正統的な企業研究と職種研究である。
正統的なお題の欠点は、議論が予定調和的になりがちで、学生間の違いが際立たないことだ。そこで学生を惑わす、意表を突くお題が登場する。コンサル系企業では「フェルミ推定」という設問が多いと言われる。
典型的なフェルミ推定の質問は、「東京都のマンホールの数は?」や「日本の猫の数は?」などだ。今回も、「2027年に開通するリニアモーターカーの東京―大阪間の最適運賃を求めよ」(上智大学・文系)、「全国の塾の数を予想する」(鹿児島大学・理系)、「1日に新幹線を利用する外国人観光客の数を推定する問題」(名城大学・理系)などが、お題として登場している。
フェルミ推定で見ているのは、解答の正しさではなく、仮説の立て方だ。素早く前提を整理して推論する能力が測られる。マンホール問題では、マンホールが設置されている間隔などを仮定して、数を導く。グループワークでは学生間で仮説の優劣を競うことになるが、慣れていないとフェルミ推定に対応できない。いくつかの問題を解いておいてほしい。
砂漠、無人島…極限状態での判断力を問う
惑わせるお題の類であるが、回答を見ていると、「極限状態でどうするか」という設問も目立つ。いろんな極限状態があるが、砂漠、無人島、宇宙などが多い。まず砂漠から。
・「あなたは友達と砂漠に来ていて迷子になりました、誰をラクダに乗せて、町に助けを呼びに行かせますか」(金沢大学・文系)
・「飛行機に乗っていたら砂漠に不時着しました。持っているもののリストを渡されて、これらを使って助かるにはどうしたらいいか、そのものの優先順位をつけてください」(広島大学・文系)
砂漠のサバイバル問題では、極限状態における優先順位の判断が見られている。
次に無人島。砂漠問題では「脱出」が問題だったが、無人島問題では「生き残りのための道具」が問われている。また地図の謎解きやマーケティングを取り入れたお題もある。
・「無人島に1つだけ持っていけるなら何を持って行く」(和歌山大学・文系)
・「島に漂着して遭難した場合、船にある何を持って行くか、順位をつける課題」(宮城大学・理系)
・「5人ほどのチームで、1人3枚ほどある島の地図の断片をもらって、それをメンバーに見せず口だけで説明して、その島の地図を完成させるというグループワーク」(広島大学・文系)
・「1年間で無人島に1000人を集めるためにはどうするか」(名城大学・理系)
宇宙問題では、「宇宙船の脱出」(西南学院大学・文系)や「遭難した宇宙船の船員として、母船にたどり着くために必要な物資を選ぶ」(筑波大学・文系)のように、脱出やサバイバルを問うものもあるが、地球と異なる宇宙環境に対する推察力、想像力を問うお題が多い。
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