パナソニックが「ツタヤ」にすがりついた理由 自前主義を脱却へ、津賀社長が抱く危機感
東京・世田谷区の二子玉川駅前、多くの家族連れ客で賑わう人気スポットがある。「二子玉川 蔦屋家電」だ。3月10日、ここに家電大手のパナソニックが”社長肝いり”のショールームを開業する。
蔦屋家電は、書店と電器店とカフェが融合した新業態の商業施設だ。2015年、CDレンタルの「TSUTAYA」を手がけるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が開設した。これまでもパナソニックのキッチン家電や美容家電の取り扱いはあったが、今回の主役は家電ではない。
「リライフ・スタジオ・フタコ」と名付けられたショールームでパナソニックが押し出すのは、リフォームなどを手掛ける住宅事業である。しかもキッチンやバスルームといった商品を単に展示するのではなく、同社の家電や他社のインテリア雑貨や書籍などを一緒に並べ、ライフスタイルを丸ごと提案しているのが特徴だ。
商品単体ではなく、ライフスタイルを提案
キッチンスペースの展示では、IH調理器と食卓が一体となった「いろりダイニング」のテーブル上に、肉の丸焼きなどが楽しめる調理家電「ロティサリーグリル」が置かれている。その周りには食器やインテリア、料理に関する書籍がずらりと並ぶ書棚も陳列してあり、実際の食事風景が目に浮かんでくる。
パナソニックは本社のある大阪で住宅に特化した大規模なショールームを運営しているが、首都圏に同様の施設がない。そこで、ターゲットとする高所得のシニア層や家族連れが多く来店する二子玉川に旗艦拠点を設け、東日本にも攻勢をかけたい考えだ。マーケティングにはCCCが持つ6500万人ものTカード会員のデータも活用。商品に関心を持った客は、近隣の「パナソニックリフォーム」や新築事業を手掛ける子会社「パナホーム」の事業所にも誘導していくという。
ただ今回の施設を自前ではなくCCCと手を組むことにしたのは、ほかにも理由がありそうだ。パナソニックの津賀一宏社長は、「ライフスタイルを創出し続けてきたCCCの知恵と、パナソニックの技術という両社の強みを融合し、化学反応を起こすことで新たな暮らしの姿を生み出したい」と語る。この「化学反応」にこそ、津賀社長が考える真の狙いがある。
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