パナソニックが「ツタヤ」にすがりついた理由 自前主義を脱却へ、津賀社長が抱く危機感

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両社の”出会い”は、2014年にさかのぼる。パナソニックが神奈川県藤沢市にある家電工場の跡地に作ったスマートシティに、その年の12月、CCCの手掛ける商業施設「湘南T-SITE」がオープン。店舗を視察した津賀社長は、書籍やインテリアのショップ、カフェなどが入り交じる店内の陳列形式に感動を覚えたという。

2015年秋、津賀社長とCCCの増田社長の初めての会談が実現。話は大いに盛り上がった。そして2016年の暮れ、「ライフスタイルを提案する拠点を作るということで、パナソニックから相談を受けた」(増田社長)。

日本の伝統的ないろりを模した、IH調理器付きのコンセプト商品も展示(撮影:大澤 誠)

「パナソニックとCCCは発想の仕方が正反対だ」。そう語るのは、両社長を引き合わせ、今回「リライフ・スタジオ・フタコ」の責任者を務めているパナソニックの竹安聡執行役員(ブランド・宣伝担当)だ。「たとえばキッチン設備を提案する際、当社では機能の良さを打ち出すが、CCCは、ここからどのようなだんらんが広がるかを考える。幅広くライフスタイルを提案するには、CCCとの協業なしに解は出なかった」。

自前でできないことは、他社に頼る

CCCだけではない。パナソニックは最近、自ら異色タッグを相次いで仕掛けている。3月1日には、睡眠関連サービスの共同開発で西川産業と、IoT家電の実現に向けた技術開発でNTTドコモと、さらには新事業創出の取り組みの一環として、米シリコンバレーに拠点を置く投資会社のスクラムベンチャーズ社との提携を発表したばかりだ。

パナソニックは元来自前主義の強い企業だったはず。「他社と積極的に手を組むようになったのは、津賀社長になってから」と、竹安氏は明かす。

2012年の社長就任以来、経営再建を進める津賀社長は、「クロスバリューイノベーション」をスローガンに掲げてきた。社内にある36の事業部と、それを統括する4つの事業会社での縦割り的な悪習を取り払うとともに、自分たちだけでできないことは他社の力を借りるという「脱・自前主義」の意味も含まれている。

外部人材の登用にも積極的だ。独SAPから招聘された馬場渉氏(写真左)は、イノベーションの推進を担う。シリコンバレーオフィスではTシャツにジーンズ、はだしといういでたちだ(写真:パナソニック)

力の借り方は提携だけではない。ここ数年目立つのが、外部人材の登用だ。2016年にはメリルリンチ日本証券の元アナリスト、片山栄一氏を招聘。2017年にはパナソニックに入社後転籍し、マイクロソフト日本法人の社長などを務めた樋口泰行氏を呼び戻し、BtoB事業のトップに迎えた。ほかにも、独ITベンダーのSAPから馬場渉氏、米IBMからは山口有希子氏など、異業種から多くの人材を幹部に引き抜いてきた。

ともすれば、プロパー社員からの反発を招きかねない施策だが、津賀社長は「新しい会社に変えていくためには、外から事業のトップを呼ぶことも必要だ。個人的な魅力や人脈などを通じて、風土まで変えていってほしい」と狙いを語っている。

プラズマテレビの過剰投資を元凶とする経営不振に陥って以降、津賀社長のもとで事業改革を進めてきたパナソニック。他社の知見を借りるべき領域を明確にすれば、自らの強みも見えてくる。風土改革は、まだ始まったばかりだ。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界、総合電機業界などの担当記者、「東洋経済オンライン」編集部などを経て、現在は『週刊東洋経済』の巻頭特集を担当。過去に手がけた特集に「半導体 止まらぬ熱狂」「女性を伸ばす会社 潰す会社」「製薬 サバイバル」などがある。私生活では平安時代の歴史が好き。1児の親。

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