JR東日本が「中古車両」を海外に譲渡する狙い 武蔵野線「205系」336両をインドネシアへ
JR東日本の205系を実際に扱った経験のある各電車区・車両センターの検修担当、及び乗務員をKCIの電車区に短期派遣して現地指導を行ったほか、KCIからも、技術系職員を大宮総合車両センターに短期研修として定期的に受け入れている。また、KCIの本社営業系職員に対しても「ホスピタリティー研修」と題したものを、新宿本社にて実施している。
加えて、包括的相互協力の覚書に直接関わるものではないと言われているが、タイミングを同じくして、2014年度末からJR東日本社員の語学研修がインドネシアで毎年実施されている。2015年11月には清野智会長がKCIを表敬訪問した。ジャカルタの鉄道ビジネスに対する、JR東日本の並々ならぬ意気込みが感じられる。
このように2014年以降、JR東日本とKCIは相互に交流を深め、日本側ではグローバル人材の育成、インドネシア側では日本の鉄道技術・サービスの吸収という双方が「ウィン・ウィン」となる関係を築いている。
2015年以降、車両故障件数が年々減少しているだけではなく、日本の鉄道にヒントを得た駅構内のリニューアル、地下通路の設置、放送・ディスプレイによる旅客案内の充実、また運行情報アプリの配信など、ここ数年で目覚ましいサービスアップが図られている。これは『ジャカルタの鉄道は、駅も「日本」を見習った』で、さかいもとみ氏により伝えられている通りである。朝夕ラッシュ時の列車詰まりによる主要駅への入線待ち車内案内など、タイミングも、内容もあまりにも日本の放送そのもので、果たして本当にここがインドネシアなのかと疑いたくなるほどだ。
都営三田線の車両が先駆けに
わが国とジャカルタ首都圏の鉄道網整備の関わりは古く、1970年代後半から主に政府開発援助として、各線の電化・近代化が図られ、さらに日本製の新製電車も1997年までの間に144両が導入された。しかし、「造ったら造りっぱなし」というハコモノ整備が主体であるODA支援の仕組みそのものの問題、さらにアジア通貨危機のあおりを受け、適切な予算付けもままならず、良好なメンテナンスサービスが維持されているとははなはだ言い難い状態であった。
そんな状況を打開するため、2000~2001年にかけて都営三田線で活躍した東京都交通局6000形72両が無償譲渡された。ジャカルタにおける中古車両導入の先駆けである。根本的に不足する車両数の補充だけでなく、冷房急行サービスを提供し、それまでの「貧困層の乗り物」からの脱却を目指すという、現在のKCIスタンダードにつながる深い意味合いがあった。このサービスの良好な滑り出しから、その後も日本からの中古車導入が継続的に続くことになる。以降2012年までに譲渡された車両は536両に上る。
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