JR東日本が「中古車両」を海外に譲渡する狙い 武蔵野線「205系」336両をインドネシアへ
3月2日、京葉線新習志野駅に現れた「むさしのドリームジャカルタ行き」。鉄道ファンのみならず、多くの利用者の目を引いたことだろう。高崎線・上越線などを経て、船積みの後、終点ジャカルタを目指す、長い旅路の始まりである。JR東日本は2月28日、武蔵野線で活躍する205系全336両のジャカルタ、インドネシア通勤鉄道会社(KCI)への譲渡を発表している。この「むさしのドリームジャカルタ行き」は、その譲渡第1号なのである。
なお、これまでにも2013年180両、2014年176両、2015年120両と、埼京線・横浜線・南武線で活躍してきた205系車両がインドネシアへ譲渡されており、今回は4例目にあたる。
現在、KCIが所有し、運用している車両は888両(いずれも日本からの譲渡車両)で、約半数を205系が占めている。今後、それがさらに増えることになる。KCIは、首都ジャカルタの環状線と、その各ターミナル駅から放射状に延びる主要4路線と支線格の2路線、計223.3kmで営業を行っており、昨年の年間輸送量は3億人を突破した。KCIの利用者数は2013年以降、205系の導入と比例するように高い伸びを示しており、ジャカルタにおける鉄道の旺盛な通勤需要を表しているといえる。
JR東日本は社員をジャカルタに派遣
KCIは2020年までに1日当たりの利用者数を120万人へ引き上げることを目標としている。しかし、昨年は4月にスルポン線ランカスビトゥン電化開業、10月にブカシ線チカラン電化開業と、立て続けに営業区間が拡大し、伸び続ける利用者数に対し、運用車両が逼迫しており、新たな車両導入は待ったなしの状況であった。
JR東日本からの車両譲渡は2015年にいったんストップしているが、これは日本側で大規模な205系車両の置き換えが発生しなかったためで、2014年にKCIがJR東日本と締結した包括的相互協力の覚書に基づく支援協力は引き続き実施され、両社の良好な関係は継続された。JR東日本からは社員をKCIに出向させ、主に現場の技術指導、また円滑なメンテナンス部品の確保のため、日本側サプライヤーに対する窓口業務などを行っている。
2016~2017年の導入形式は千代田線で活躍した東京地下鉄6000系に切り替わり、年度毎の導入数も、それまでの年間100両超という大規模なものではなく、毎年60両ずつにとどまった。だが逆に、そのことは2015年度末のKCI営業キロと設備に対して、当時の車両数は十分であるということもあり、既存車両の保守技術の向上、また増大する本数に対応しきれていない駅設備の改良など、サービス面への投資を増やすための「冷却期間」に充てられた。
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