iPhoneが今年はさらに「大画面化」する必然 大画面化はiPhoneの買い替えを促進する

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アップルが2017年に「これからの10年を切り拓くモデル」として投入したiPhone Xは、欧米で最も購買が活発になるホリデーシーズンを含む2017年第4四半期(10~12月) に、すべてのスマートフォンの中で最も多くの販売台数を記録した。

アップルのスマートフォン販売は前年同期比から1%の減少ながら、売上高は13%の成長を遂げることができた。ひとえに、iPhone Xを999ドル、日本では10万円以上の価格に設定し、3年ぶりとなるデザイン刷新と大画面化による買い替え需要を喚起できたからだった。

スマートフォン市場は本格的な下落局面へ

米経済誌『Fast Company』のインタビューに応えたアップルのティム・クックCEOは、iPhone Xについて「安くはない」ことを認めている。iPhoneの販売台数が下がったことは、iPhone Xの発売時期と価格に要因があると考えていいだろう。

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そこで取りざたされているのが、6.1インチの液晶モデルの投入だ。有機ELディスプレーモデルよりも価格を抑えながら、大画面化をスタンダードへ設定していくことになる。

こうして、iPhone Xは6.5インチと5.8インチの2サイズ、これに加えて6.1インチのモデルが投入されるとのニュースを解説することができる。注目すべきが価格だ。iPhone Xの999ドルという価格は5.8インチモデルには引き継がず、求めやすい価格に設定されることを期待している。

その一方で、価格をダイナミックに下げられないいくつかの理由もある。スマートフォン市場は本格的な下落局面を迎えつつあり、2017年第4四半期の世界のスマートフォン販売台数は前年同期比で6.3%減となった(IDC調べ)

スマートフォンの大画面化や顔認証、絵文字のアニメーション機能などの新しいスタンダードを提供し続けているアップルも、その大きな流れには逆らえないだろう。その点から、性急な価格の割引は、平均販売価格を高く維持できなくなるため、よほどの販売台数の積み増しを見積もらないかぎり、難しいとみられる。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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