河川敷在住ホームレスを襲う「一般人」の暴力 だから彼らは隠れるように寝ている

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野宿生活者の夜回り(夜一人一人の様子をうかがう)に同行した時、外からはまったく見えない場所で寝ている人が多くて驚いた。

中には城の堀の周りにかけられた橋の下で寝ている人もいた。寝返りをうったら、川にドボンと落ちてしまう場所だ。

その時は、「なんで隠れるように寝ているのだろう?」と思った。理由はそのとおり“暴行を働く一般人から”隠れているのだ。

「背中にひどい火傷をしてしばらくは夜眠れなかったよ……。今でも引きつるしね」

警察に行ったが…

「暴行された後に警察には行かなかったんですか?」と尋ねた。

「もちろん警察には行ったよ!! 川崎駅前の交番に行って、中学生らしい集団に火をつけられたって訴えた……」

おじさんが交番にいる警察官に訴えると、警察官は、

「警察はお前らホームレスの相手をしてるヒマはないんだ!! 税金も払ってないくせに。そもそも外で寝ているお前らが悪いんだ。帰れ!!」

と怒鳴ったそうだ。取り付く島もなかった。

「それ以来、何があったって警察に頼るのはやめたんだ。ヤツラはホームレスを助けたって、点数にならないんだろうしな。交番で椅子にふんぞりかえって座ってさ。あてになるわけないよ」

すべての警察官がこのような酷い人ではないだろう。でもホームレスが警察に相談したら、冷たくされたり、逆に怒られた、というのもよく聞く話である。

そしておじさんは、暴力から逃れるために今の場所に引っ越してきたという。

「もともとここは知り合いが住んでた場所なんだよ。もうずいぶん前に病気になって死んじゃったけどさ。家も潰れてたんだけど、そこらへんから、廃材や鉄パイプをひろってきて建てたんだ。まあ大変だけど自分のためだからね。寝起きする場所だから、雨風だけは防がないとね……」

寂しそうに笑った。

おじさんにとっては台風よりも、人からの暴力のほうが耐えられなかったのだ。なんともいたたまれない気持ちになった。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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