野宿生活者の多くは、廃品回収にて生計を立てている人が多い。アルミニウムや銅など換金率の高い金属を集めて現金化するのだ。多くの人たちは、飲料水や酒の空き缶を集める。しかし、ここの人たちは工事現場などから資材や道具などを持ち出してきて、金属を取り出して売りさばくのだという。
「同じ地域出身の人が集まってグループを作っているらしいね。詳しくはわからないけど……」
と眉をひそめヒソヒソ声で話す。
「あ~ここから少し離れた場所だけど俺の知り合いの、優しい人紹介してあげるよ。その人なら話聞きやすいから。ついてきなよ」
というとスタスタと歩き出した。渡りに船だと思ってついていく。
電線リールや電線からはがされた皮が散らばっている
先ほど言っていた、金属を売りさばく人たちが住むという小屋の前を通ると、たしかに電線コードの電線リールや電線からはがされた皮が散らばっている。たしかになかなか荒んだ雰囲気だ。
案内をしてくれているおじさんはもともと、産業廃棄物処理の仕事をされていたそうだ。だから金属の値段もわかるという。
「落ちてるのは工事現場から盗んできた電線リールだな。銅は高いからね。1キロ800円くらいいくから。1キロ100円くらいのアルミよりずっと高い。あとは給湯器とクーラー、クーラーの室外機もあるな。あれは金属の塊だからね。金属屋に高く売れる。だから廃屋なんかから狙って盗まれやすい。車がないと運べないから、ホームレスが犯人じゃない場合が多いけど。でもどちらにせよ困ったもんだね」
と呆れたように言った。
しばらく歩いて、河川敷の中でもかなり辺鄙な場所についた。離れた場所にぽつりぽつりと小屋が建っている。
葦の中に隠れるように目的の小屋が建っていた。小屋の周りは小さな畑が作ってある。集めてきた空き缶も積まれていた。
「おーい! いるかい?」
とおじさんが声をかける。しばらく待つとドアが、ギギッと開いて中から大柄の男性が出てきた。大きなアクビをして、
「寝ていたよ」
慌てて「こんにちは」と挨拶をする。最初はコワモテの人かと思ったが、クシャッと優しい笑顔の中年男性だった。話を聞いた。
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