住友林業「高さ350m木造ビル構想」の真意 「現代版バベルの塔」との揶揄を跳ね返せるか

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住友林業は日本一の山林所有企業であり、東南アジアを中心に多くの自社社有林を有する企業でもある。このため木造超高層ビルの建設が世界に広がれば、木材の需要の広がりが見込まれビジネスの拡大につながるはずだ。

厳しい市場環境の中にある注文住宅を中心とする住宅事業についても、この構想は先進的で環境に優しいサスティナブルな企業イメージを周知できることから、受注面での貢献も期待できる。これらのことを考慮すると、結構、堅実なものと評価できる。

くどいようだが、そもそもが技術開発構想なのである。極論すると、木造の超高層ビル実現自体、仮に課題が1000あるとすれば、その半分でもクリアできれば御の字、というのが経営陣の本音ではなかろうか。

実現に向けた動きもスタートしている

実現に向けた動きも部分的にスタートしている。東京・国分寺駅前で完工、引き渡しした鉄骨造を木材で覆った7階建てビルのほか、当面の目標として2025年までに高さ70m(14階建て)の木造ビル建設も掲げている。

ところで、住宅や木材建材の分野は国内需要の減退が予想される中で堅実な経営の発想が優先される状況だ。その中ではユニークなビジョンが生まれにくい状況にあり、あるとしてもその多くが似たり寄ったりで面白みがない。

冒頭でバベルの塔、荒唐無稽などと書いた筆者であるが、住友林業のW350計画は壮大さと堅実な視点を兼ね備えているという部分で、好意的に評価したい。山林のあり方や林業はもちろん、国や街づくりに関する将来のあり方についても示唆するものが多い。何より、まだ世界中で誰も実現していないことで、夢があるではないか。

残念ながら今現在、木造建築物の高層化はCLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)の採用など、欧米の技術によるものが主流である。わが国には法隆寺などに代表される高度な木造建造物の伝統があるが、そんな歴史的経緯と木造の風土を受け継ぐわが国の企業が、世界に打って出るというのは悪くないストーリーだ。

一方で、あえて厳しいことをいう、2041年までの23年間、この構想を実現する情熱を持ち続けてもらいたい。ただ、情熱を失い途中でうやむやになるようだったら、それこそバベルの塔のようなものと、後世に評価されかねないからだ。構想の内容は時代の変化を受けて変更されてもよい。柔軟性も企業経営には大変重要なことだからだ。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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