凶暴化する「ひったくり事件」の恐ろしい実態 犯罪者が嫌がる「攻めの防犯」が必要だ

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「情報をもとに、警察内部でパトロールのルートを作成し、地域のボランティアさんにも情報提供を行い、地域の防犯活動にも活用しています。犯罪の認知件数は減少傾向にあるため、一定の効果はあったと認識しています」

と手ごたえを感じている。

自分の意識と行動次第

データの活用について前出・出口教授は、

「地域ごとに何が起きているのかを知ったうえで対策を練るのが『攻める防犯』として大切なことです。警察などが作成している犯罪マップなどを確認し、自分が住んでいる場所にはどんな犯罪が多いのかを確認しておくことが重要です。すべての場所でひったくりが発生しているわけではないのです」

と地域を知ることを訴える。

かつて“大阪名物ひったくり”というありがたくない呼び方をされていた大阪も、府民に徹底的に知らせることで、2000年には1万件を超えていた認知件数を、昨年は646件にまで減少させた。

カバーを取りつける活動を行う大阪府警(写真:週刊女性PRIME)

オートバイで後ろからひったくる事案や、未成年の犯行が多かったため、府警は組織を挙げ非行対策を強化。自転車にはひったくりカバーをつけ、対策の網を広げた。

さらに犯罪発生情報などを知らせるメール配信システム『安まちメール』を利用して、こまやかに情報を発信した。

大阪府警生活安全部・府民安全対策課の織田博行調査官が、取り組みの成果を示す。

「情報を受け取った人に、カバーを取りつけてもらう活動を行いました。各企業の協力を得て、若い人にもつけてもらえるような可愛い柄のカバーを作成し、配布を続けてきました。

大阪府警が配布するひったくりカバー(府警提供)(写真:週刊女性PRIME)

電車でもひったくりの注意喚起をするアナウンスを流してもらい、商業施設ではひったくり防止の垂れ幕、路上ではひったくり防止のペイントをしてもらったり、お年寄りが集まる会で講習会を行ったりと、オール大阪、府一丸となってやれることはすべてやってきました」

大阪府警が配布するひったくりカバー(府警提供)

要するに自分の意識と行動次第で被害に巻き込まれずにすむ、ということを、警察の取り組みは証明している。

前出・出口教授も、

「一歩間違えたら犯罪に巻き込まれる可能性があるという認識を持って対応できるかが大切です。犯罪者はよく、あの子は緊張していなかったから襲いやすかった、と話す。歩きスマホや電話など、後ろから誰かが来ても気づかない。犯罪機会を提供しているのと同じです。防犯カメラのある道、人通りの多い道を通り、常に自衛・防犯の意識を高めていくことが大切です」

自分だけは大丈夫と、犯罪被害を他人事のように思い込まないことが肝心だ。

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