凶暴化する「ひったくり事件」の恐ろしい実態 犯罪者が嫌がる「攻めの防犯」が必要だ

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1月23日には千葉県流山市で、ひったくりをしようとした中学生2人に、パート女性(59)が木製バットで背後から尻を殴りつけられるという荒っぽい傷害事件も起きた。

前出・出口教授は、

「ひったくりや強盗は、自分の姿を被害者にさらして、力ずくで奪う原始的な犯罪。逮捕されるリスクと自分が失うものを予測できない人が多い」

と短絡的な発想しかできない犯人像を明かす。警察庁の統計によれば、全国で昨年発生したひったくり認知件数は2894件。2007年の2万3687件と比較すると、10年間で約2万件減少。

自動販売機に防犯カメラの実証実験

2010年には全国ワースト1位だった千葉県。2007年の2733件から2017年は213件と認知件数を大幅に減少させた。

「(森田健作)知事に広告塔になっていただき、県民の方々へ『ちばカエル作戦』という啓蒙活動を徹底しました」

と千葉県警生活安全部総務課の中村弘課長代理。そのポイントは4点で、1バッグはたすきにかけカエル、2手荷物は歩道側にもちカエル、3バイクの音にはふりカエル、4自転車のカゴにはカバーをつけカエル。

被害者にならないための心構えを県民に訴えてきたが、さらに前出・中村課長代理は、

「今年は県警が直接管理する防犯カメラを設置する予定です。繁華街や駅周辺の幹線道路などひったくりを含む街頭犯罪の抑止効果を狙いたい」

北千住の商店街では複数の街灯に防犯カメラが設置されていた(写真:週刊女性PRIME)

以前は、事件の証拠を確保する意味合いの強かった防犯カメラ。それを前面に出し犯罪防止に役立てることを、前出・出口教授は、警視庁の有識者会議で提案したという。

「足立区北千住の商店街は、防犯カメラが多数設置されている。街灯などに“防犯カメラ作動中”と書かれています。

今は防犯カメラをどう取りつけるかが大切です。目に見えるように設置することで、ここで犯行に及ぶとまずいと犯罪者に思わせることができる。犯罪者が嫌がることを行えば犯罪は防げる。それこそ私が提唱する『攻める防犯』なのです」

足立区では、自動販売機に防犯カメラを設置する実証実験を開始した。犯罪を減らす試みは各自治体も力を入れる。防犯カメラ以外にも、犯罪行為を思いとどまらせることはできると出口教授。

「マナー運動のあいさつでも、犯罪者から見れば、街の人間に見られたと思う。防犯ボランティアが立っているだけでも、十分に効果があります」

過去の犯罪発生データから、ひったくりの発生を予想している警察がある。

京都府警は2016年10月から予想システムを導入した。

「過去のデータをもとに次に発生する可能性の高い地域が地図上に示されます。その地域では、警察官が巡回を強化するなどしています」

と京都府警刑事部・捜査支援分析センターの岡本博昭所長補佐。

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