「ゾゾ頼み」から脱却へ、アパレル企業の苦闘 自社EC立ち上げを目指すが、ハードルは高い

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さらに悩ましいのが、出店各社が乱発するクーポン値引きだ。「ゾゾはセレクトショップ系のブランドが多くておしゃれな印象が強かったが、ここ2年で楽天に出店するような安価なブランドの商品が大量に増えた」(大手アパレル幹部)。

ゾゾタウンのトップ画面にはクーポン対象商品が並び、店頭では競合にならなかったようなブランド同士での価格競争が過熱。値引き合戦は利益率の悪化に加え、ブランドイメージの毀損にもつながりかねない。

とはいえ、ゾゾタウンをはじめとしたECモールには多彩な商品がそろい、検索機能やサイトの見やすさが優れているのも事実。手元に残る利益は少なくても、大半のアパレルは、モールの圧倒的な集客力に頼らざるをえない。実際、ゾゾタウンの出店ブランド数は2016年度までの9年間で約6倍も増加した。

先行するベイクルーズ

こうした状況下で、自社サイトでの売り上げを大きく伸ばしているのが、「ジャーナル スタンダード」などのブランドを持つアパレル大手・ベイクルーズだ。他社に先駆けてモール依存からの脱却を進め、自社サイト「ベイクルーズストア」の2017年度売上高は136億円(前期比43%増)に伸びた。ネット通販全体に占める自社サイトの販売比率は、5割に達する。

ベイクルーズでは、サイトの開発や運営にかかわる業務をほぼ社内で行っている。商品画像の撮影や実店舗と連携した仕組みの構築も、社員による試行錯誤の積み重ねだ。加藤利典執行役員は「サイト運営はカスタマイズの連続。内製化したことで、コスト削減だけでなく、企画のリリースや問い合わせへの柔軟な対応が可能になった」と語る。

サイトでは店舗別の在庫状況が10秒ごとに更新され、試着したい場合は店頭での取り置きを選ぶこともできる。4月からは、おすすめ商品や近くの店舗の在庫に関する情報を、顧客一人ひとりの行動パターンに合わせてリアルタイムで自動配信する仕組みが稼働する。

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