サヘル・ローズが訴える「養子縁組」の大切さ 早い段階から親の愛情を受けることが重要

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続いて、福岡市の児童相談所、子ども総合相談センターの所長を務める藤林武史氏が、行政側の立場から現状や課題を語った。

藤林氏は、児童相談所や民間団体が特別養子縁組が必要だと判断したのに、結果的に断念したケースが270件(2015年度)あることを紹介。

生みの親の同意を待つ間に子どもが対象年齢を超えてしまったり、親が同意後に拒否したりすることなどが理由だと説明した上で、法整備の必要性を強調した。

その後、サヘルさんら養子・里子の経験者や特別養子縁組で子どもを迎えた人たちが、パネルディカッション形式で自分たちの経験や思いを語り合った。

「一対一」の関係の大切さ

サヘルさんの出身地のイランでも、施設で暮らす子どもは多い。サヘルさんは4歳のころに親を亡くして孤児院に保護され、育ての親のフローラさんに迎えられる7歳まで施設で暮らした。

パネルディカッション形式で自分たちの経験や思いを語り合った(写真:Satoko Yasuda / Huffpost Japan)

初めてフローラさんに会った時のことや施設にいた時の心境を、次のように振り返った。

「第一声で『お母さん』って呼んだんです。私たちにとって、施設に来てくれる人が母親みたいな存在になるんですよね。同じ施設に入った仲間たちと一緒に、日々来る人たちに『自分たちの親になってください』と必死で訴えていたのを今でも覚えています」

「いつか外に出たいし、普通に名前を呼んでもらいたい。壁を隔てた向こう側には一般の生活があるけど、私たちにはないんですよ。それがすごく羨ましかった」

幸運にもフローラさんに迎えられた後も、苦労は続いた。2人に血の繋がりがないことで周囲から心のない言葉をかけられたり、家庭で育った子どもに比べて知識や社会常識が大きく遅れてしまったりしたという。そうした自身の経験を踏まえて、0〜5歳児までの早い段階で家庭に迎えられることが大切だと訴えた。

「一対一の関係があるからこそ、子どもにこれが正しいこれがダメだと教えられることがたくさんあります。施設では一人の大人が大勢の子どもの面倒をみないといけないので、子どもが疎外感を感じてしまいます」

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