日銀「黒田続投」真の意味は「金融緩和」の継続 今後の日銀の舵取りはどのようになるのか

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しかし黒田総裁の再任は、政府が容易に金融政策を正常化させないことを意味する。政府と日銀は、2013年1月に「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」という共同声明を発表している。この政策連携には、日銀が物価安定目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とし、その目標達成のために金融緩和を推進することが“明記”されている。つまり、消費者物価上昇率2%の目標は、日銀が勝手に降ろすことのできない“御旗”なのだ。

黒田総裁が就任して5年。就任時に華々しく打ち出した「2年で2%の物価上昇率」は、達成の見込みすらない。だが、2%の物価上昇率の達成が無理なことは、政府も市場も織り込み済みだ。黒田総裁が評価されているのは、ほとんど成果のないアベノミクス政策の中で、強烈な金融緩和を実施し、「円安による企業収益の回復」と「日経平均株価の上昇」をもたらしたことにある。そして、この強烈な金融緩和こそが、大きな落とし穴であり、最大の懸念材料でもあるのだ。

消費税「15%」が必要に

安倍晋三首相は、2020年度までのプライマリーバランス(基礎的財政収支、以下PB)の黒字化を目指していたが、2017年12月に消費税増収分の使途変更などによる幼児・高等教育無償化を盛り込んだ政策を打ち出すとともに、この黒字化目標を破棄した。

それに伴って、1月23日に開催された経済財政諮問会議(議長・安倍首相)で、内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」を提出した。この試算では、高成長シナリオで実質GDP(国内総生産)成長率が2020年度に1.5%、2020年代前半から2%程度に達すると想定。PBの黒字化は、昨年7月の試算よりさらに2年遅れて2027年度になると予想している。具体的には、2020年度のPBは10兆8000億円程度の赤字だが、2027年度には8000億円程度の黒字になるとの見方だ。

しかし、そもそも2020年度のPB黒字化は「国際公約」だった。にもかかわらず、それが破棄されているだけではなく、黒字化達成目標自体がどんどん先延ばしにされている。もっとも懸念されるのは、黒字化目標を安易に先延ばしすることにより、財政規律が緩み、財政拡張に歯止めがかからなくなることだろう。その原因となっているのは、金融緩和にほかならないのだ。

日銀の実施した政策目標金利を0%水準に誘導する「ゼロ金利政策」により、政府が発行する国債金利が大きく低下したことで、国債関連コストは前例のないほど低水準になった。つまり、低い金利、安いコストで政府は国債を発行できるようになったわけだ。これでは、財政規律など守られるはずがない。案の定、安倍首相は「財政拡張路線」へと舵を切った。何しろ、国が発行する国債のほとんどは、金融緩和という名の下で、日銀が買い取ってくれるので、国債が未消化となる(売れ残る)心配は一切ないのだ。

安倍首相の進める財政拡大のしわ寄せは、すべて日銀が引き受けてくれる。それこそが、黒田総裁再任の根幹にある。

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