女性のキャリア邪魔する「意識の持ち方」問題 職場でミスコミュニケーションが起きるワケ

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――ミスコミュニケーションがはびこっていることが原因ですか。

背景には職場の多様性が広がっていることがある。性別、国籍ばかりでなく、仕事に対するスタンスなどいろいろなもので多様性が生まれている。日本の会社組織は今までは同質性が特徴であり強みだった。逆にマネジメントをきちんとしなくても「あうんの呼吸」で物事が動いているところがあった。多様性が高まれば逆にしっかりマネジメントをしないと問題が出やすい。なお多くのところがマネジメントをしなくてよかった時代のままを引きずっているので、いろんな問題が職場に出てきている。

――今、過渡期ですか。

そう。女性管理職の比率はまだ6~7%なので、プレーヤーとしての女性と管理職の男性の対立構図になりやすい。管理職に女性がもっと増えてくると、プレーヤーにはもともと男性が多いのでバランスが取れるようになる。今は歪んだ多様性の最たるものが管理職の男性と女性部下。そこでのミスコミュニケーションが目につく。

「女性だから助け合ってね」はもはや通用しない

――女性と女性の対立は。

女性の中でも多様性はかなり進んできている。とかく女性とひとくくりにされるが、その中にはいろんなプレーヤーがいる。そこも同質性を前提としたマネジメントの限界があるところだ。女性だからわかるだろうとか、女性だから助け合ってねといったマネジメントはもはや通用しなくなっている。

――女性は短時間勤務制度の落とし穴にも注意が必要ですか。

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時短は、子どもを育てながら働く女性に優しい制度に見えるが、落とし穴になりうる。何となく時短制度を利用した場合、意図せずマミートラックに乗ってしまうことがある。本人は一時的なつもりでも、成長に必要な業務経験を逃し続けたまま年齢を重ねて、元のキャリアトラックに戻れなくなる。

――フルタイムに戻るのが前提なのですね。

男性、女性を問わず選択肢をたくさん提示したいとの思いがある。その選択肢でいちばん難しいのが、女性が子育てしながらキャリアを追求しようとする選択肢。専業主婦を選ぶのも時短を選ぶのも否定しないが、ただ何となく流されていると、本人が望まないところに行く可能性が強い。

世の中の「ルール」を理解せずに、いわば「戻れない片道切符」を無意識のうちに手にしてしまう女性がけっこう多い。追い詰めたいという考えはないが、こうしたいならこういうことを考えようと意識し、何事も学ぶ。受け身でいることにいいことはない。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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