「ハラスメント」で刺されない若手との接し方 40代管理職は、20代とどう付き合うべきか

拡大
縮小

では、「相手がハラスメントと思うかどうか」を決めるのは一体なんでしょうか。それが、冒頭で本稿のテーマだと述べました「距離」、相手との心理的な距離感です。心理的な距離感とは、別の言い方をすれば、親近感と言っても良いでしょう。

ちなみに、当然ながら心理的距離感と物理的・身体的距離感には相関があり、好意をもっている相手には身体的にも近づきたくなり、逆に、敵対心や苦手意識がある相手からは遠ざかりたいと感じてしまいます。この心理的距離が相手とどの程度であるかを間違えて行動を起こすと、それが何らかのハラスメントとされるのです。

こちらは勝手に分かり合っていると思っていても、相手はこちらを得体の知れない人と思っていれば、それぞれが適切な距離だと思っているものは異なることになります。心理的距離感が異なれば、心地の良い物理的距離感も異なります。

親しく振舞っているつもりが、相手には馴れ馴れしすぎると感じたり、相手のことを思ってのストレートな物言いとしたものが、言われる筋合いのないような他人から余計なことを言われた、と思ったりするわけです。

物理的距離から心理的距離を推察

心理的距離は、心の中のもので見えないものですから、それと相関のある物理的距離から推測するしかありません。ある人とどれぐらい心理的距離があるかどうかは、どの程度の物理的距離を相手がどのように感じているのかをよく観察すればよいのです。

エドワード・ホールは物理的距離を、45cm以下を密接距離と呼び、恋人や親子などの極めて親しい人のみが快適な距離としました。120cm以下を個体距離と呼び、友人や知人レベルの親しさの人なら快適な距離としました。

例えばこのような基準をベースに、日常的に対象となる相手とどの程度の距離にある場合に、相手がどう思うかをきちんと観察し、それによって心理的距離を推定するわけです。自分が近寄ると、相手がじりじり下がったり、嫌な表情をしたりするような状況であれば、それは近すぎるということです。

往々にして、心理的距離感を間違える人はこういう細かいところを観察できていないのです。相手を観察せずに自分の行動を決めてしまうのは、自分の欲求や都合だけで動いていると言っても過言ではありません。

「相手への依存心」や「嫌悪感」が、適切な距離感を保てない要因に
このように、物理的距離が相手に与える影響を観察できていないという他にも、距離感を誤ってしまう要素はいろいろあります。まず近すぎる場合(ハラスメントはこの場合によく起こります)の原因としてよくあるのは、「相手への依存心」です。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT