「2月暴落」が的中!経済物理学で「次」を予想 モデルが示す日経平均株価の臨界点

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日経平均は2月14日に一時2万0950.15円まで下落した(終値は2万1244.68円)。2017年11月の記事執筆時点で2018年2月末にバブルが崩壊すると仮定して、推計していたモデルと実際の株価の動きを比較すると、今回の株価急落までの動きはモデルに沿った動きとなっていた。つまり、2017年11月時点にモデルが示したとおり、日経平均株価はバブルを形成するパターンに入っていたと考えられ、急落は起こるべくして起こったといえる。

一方、2018年2月末までバブルが崩壊するという「均衡」のほかにも「短期的な調整(モデルによると2万1000円程度まで下落)を経て、バブルが再形成されていく均衡」があるということを示していた。今回の株価調整はまだこの2万1000円を大きく割り込んでいないため、調整が一時的なものにとどまって再び上昇サイクルに入り、一段と株価が上昇する可能性もまだ残されている。現在の株価水準は、再上昇するか一段と下落するかの分かれ目にあると言える。

そこで、直近(2018年2月13日時点)のデータを用いてモデルを再推計(アップデート)し、株価が再上昇した場合にどのようなバブル形成とその崩壊が生じる可能性があるかを予想した。

足元から上昇に転ずれば6月は要注意だ!

具体的には、過去の分析と同様にモデル上のバブル崩壊のタイミングを2018年2月末から1ヵ月間隔でずらしてみて、株価データに対してフィットするか(当てはまりがよいか)を調べることにより、バブル崩壊が最も起こりそうなタイミングを調べた。結果は2018年5月末まではモデルの当てはまりが悪く、バブル崩壊の可能性は低いことが分かった。

足元の株価の調整の大きさを考えると、株価が再上昇したとしてもバブルの再形成に3~4ヵ月(6月くらいまで)は要しそうだ。一方、2018年6月末ではモデルの当てはまりのよさを示す決定係数が大幅に上昇した。足元の水準から株価が再上昇し、バブル形成のサイクルに回帰した場合は6月頃に再びバブル崩壊の可能性が高まるようだ。

むろん、まだ株式市場における調整は完全には終わっていないとみられ、調整に時間がかかれば次のバブル崩壊のタイミングも今回の推計よりも後ずれするだろう。さらに、今回の調整が一段と進む(さらに株価が下落する)場合は長期的なサイクルが終了し、当面はバブル崩壊の可能性がなくなる可能性もある。いずれにせよ、今後数ヵ月の株価の動きが重要である。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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