「居抜き物件取引サイト」という新しい金脈 テンポイノベーション社長に聞く
原:そんな中、実は、とあるIT関連企業が買収に関心を示したのですが、メインのビジネスで非常に強い存在感を示しているところだったので、その傘下に入っても環境にあまり変化はなさそうでした。だから、「もしもその会社に売るなら、私を含めた全社員が辞める」と言って断固反対し、自分たちで売却先を探すことにしたのです。
村上:それで、今のオーナーを見つけてきたということですか?
原:いいえ。まだその手前の話です。全部で3回の奇跡が起きていますから(笑)。最初に身を置こうと決めたのはテレウェイヴ(現アイフラッグ)という会社です。私たちと同じようなビジネスを手掛けている事業部をもっていたので、それと合体させればマンパワーも増えると思いました。
村上:ようやく事業の成長の制約から解放されるオーナーを見つけてこられたのですね。それで順風満帆とならず、次の奇跡が必要になったのはなぜでしょう?
原:ところが、テレウェイヴも経営上の不祥事が発覚したうえに業績不振に陥り、またしても子会社を売却するという話になったのです。なので、やはり自分たちで次の売却先を探すことにしました。
村上:短期間で2度目の売却、それを親会社ではなく子会社自身で探してくるとは、なかなかない事例ですね。ちなみに、原さんはまだ代表取締役に就任される前のことですよね?
原:まだ営業担当部長のままです(笑)。私はこの会社に入ったときから、会社の大きな資本を動かして大きなビジネスをやりたいと思っていました。言わば、「おカネのリスクを背負っていない創業者」のような感覚で取り組んできたわけです。
村上:だから転職の際に「幹部候補」に拘られていたのですね。結果、売却先はどのように見つけられたのでしょう?
「迷走」の時期
原:実際に当社の3代目代表取締役を務めていたのは当時のテレウェイヴの役員の1人で、たまたま彼が現在のオーナー企業であるクロップスを探し出してきました。そして、クロップス代表取締役会長の前田さんに私たちのことを気に入っていただいて、わずか1カ月で話がまとまり、売却額も前回よりも高額になりました。
村上:それが2009年7月のことですね。前年には金融危機があり、マクロ経済的には厳しい状況下にもかかわらず、よく良い条件で売却がまとまりましたね。その逆境下でもビジネスが拡大していたということなのでしょうか?
原:いや、まったく拡大していませんでした(笑)。M&Aの度に社員も辞めていって、当初は35名だったのが一時は6名にまで減り、クロップスに移ったときも10人前後しかいませんでしたから、売却できたのは奇跡ですね。当社の「成長可能性に関する説明資料」では「迷走」と表現されている時期ですが、本音を言えば、自分たちとしては度重なる親会社の変更も含め、おおむね計画どおりの展開になってくれました。まあ、会社の継続のためになりふり構わず動いていた時期だったことは確かですが。想定外だったことは、強いて言えば、ここまで来るのに13年もかかったことですかね。しかしそれは、自分で身銭を投じて創業したわけではないのでやむをえません。