昭和の大観光地「熱海」本当に元気になったか V字回復報道が目立つ現地で分かったこと

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観光地熱海の特徴として外国人の少なさがある。箱根町の宿泊者数のうち外国人の割合は11.1%なのに対して、熱海市はわずか1.1%だ(2016年熱海市調査)。箱根は温泉、富士山、登山鉄道、ロープウェイ、芦ノ湖(海賊船)と魅力ある景色や交通手段が満載だが、熱海の魅力はどこにあるだろうか。

アタミロープウェイ山麓駅付近、右手が市営八幡山住宅の廃墟(2018年2月、筆者撮影)

温泉は当然として、海山の眺望、サンビーチ、熱海梅園、起雲閣、MOA美術館などが挙げられるが、街中で温泉地の風情を感じるところは少なく、かつての男の歓楽街を思い起こさせる場所もある。

アタミロープウェイがあるが全長273m、高低差96mと日本でいちばん短く、3分で山頂駅まで到着する。山麓駅は熱海港の近くだが、古めかしく、廃墟となった市営八幡山住宅が痛々しい。

荒廃した箇所が熱海に影を落としているのではないか

山頂駅には古めかしい秘宝館(大人のミュージーアム)があり、そこから徒歩で行く熱海城は、本物の城ではなく、戦後に出来た観光施設だ。錦ヶ浦も望め、すばらしい眺望だが、箱根と比べるほどの魅力と言えるかどうか。

箱根が線あるいは面として魅力ある地域が結ばれているのに対して、熱海はスポット的で、また東京に近いことで高度成長期に開発が進み、その結果、街に風情がなく、荒廃した場所も点在していることが大きな課題と言える。

熱海で注目されているのは年間18回ほど開催される花火大会だ。夏だけでなく1年中開催されている。熱海港の埠頭で打ち上げられる花火は毎回5000発ほどで熱海市内の広範囲な場所から見ることができる。これは大きな魅力だ。

ただ、夏は毎回3万人ほどが訪れるが、それ以外の時期は半分以下となっている。花火と言えば夏の風物詩というイメージだからだろうか。土曜日を避け、日曜日開催が多いこともあるが、夏以外は市内の宿泊施設も満室になることはあまりない。さらなるPR活動も必要かもしれない。

十国峠の風景(2018年1月、筆者撮影)

意外なのは富士山も海も見える絶景の十国峠にわずかバスで30分、タクシーだと20分くらいで行けることだ(山頂まではケーブルカー利用)。

熱海は富士山に近いのだが、山に囲まれているために市内からは見えない。熱海に富士山が加われば魅力は増すように思う。熱海観光に十国峠をイメージさせることも重要だろう。

伊豆半島や箱根旅行に熱海が1泊加わるような観光戦略が重要かもしれない。浴衣でぶらぶら歩けるような温泉情緒も富士山も花火も楽しめる観光地として熱海が本当のV字回復を遂げることを期待したい。

細川 幸一 日本女子大学名誉教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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