昭和の大観光地「熱海」本当に元気になったか V字回復報道が目立つ現地で分かったこと

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熱海の観光産業を支えるのは宿泊客を中心とした観光客だけではない。熱海は別荘地としても栄えてきた。さらに観光産業を支える住民の状況も気になる。

1983年度には205軒あったホテル・旅館は2015年度には116軒にまで減っている(熱海市資料)。現在も至ることころで、旅館の廃墟が目立つ。熱海は都心から近くて便利ということで団体客を迎える大型旅館でにぎわったが、それゆえにバブル崩壊後の個人客中心の経営に切り替えることができず廃業したところが多い。結局大きすぎて、修繕や建て替えに莫大な費用がかかり、あきらめざるをえなかったということであろう。

負の遺産として街中に残る最大の象徴は複合商業施設「あうね熱海(aune ATAMI)」だろう。

10年近く野ざらしの「あうね熱海」。貫一お宮像前の一等地だ(2018年1月、筆者撮影)

熱海の中心地の海岸線に立つ金色夜叉の「貫一お宮像」とお宮の松。その真ん前の一等地にかつて、つるやホテルがあった。

つるやホテルは2001年に廃業し、長らく廃墟状態にあったが、解体され、2007年には跡地に、あうね熱海が建設された。

2008年秋に当初はオープン予定だったが、遅れ、やがて事業主が事実上の経営破綻になりこの計画は白紙になった。

現在、建物自体はほぼ出来上がっているものの営業はしておらず、いまだにそのままだ。

熱海では希少な平坦地の中央町に広大な敷地を有する老舗旅館玉乃井本館も廃業し、ここは更地のままだ。同じく海岸沿いの熱海港の真ん前にもかつての熱海海浜ホテルの廃墟が残る。

熱海海浜ホテルの廃墟。熱海港の真ん前だ(2018年1月、筆者撮影)

一方、再生した旅館もある。老舗大型ホテル・旅館であったニューフジヤホテル、大野屋、金城館、ウオミサキホテルは旅館再生を手掛ける伊東園ホテルズの経営となり、1泊2食・アルコール飲み放題付きで8000円~1万円程度の格安宿として営業中だ。

伊豆山の水葉亭も最近閉館したが、大江戸温泉物語グループの経営となった。大規模旅館は廃業か、格安チェーンの宿となる場合が多く、当然、後者に生まれ変わった旅館の客単価は安い。廃業した旅館の跡地は再度宿泊施設として再生させたいというのが熱海市役所の方針であるが、思うようにはいっていない。

別荘地としての熱海の評価は?

旅館廃業後、リゾートマンション建設計画が持ち上がるケースが多い。しかし、新しいマンションが旅館や既存のマンションの眺望を奪う結果となりかねず、過去には法的紛争にもなっている。現在は景観法に基づく景観計画に沿って認可される。話題となったのは昨年2月に完成した熱海駅から徒歩2分の地にそびえる30階建てのマンション。販売戸数約320戸で値段は4500万円~6億円。完成時には、ほぼ完売と報道され、景気回復を物語っているように思うが、完成から1年を過ぎた現在も売り出し中だ。

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