実際に、GDPと連動するといわれている李克強指数(鉄道貨物輸送量、電力生産量、銀行融資残高の前年比〈%〉を平均したもの)との連動性は2015年あたりから失われ、2015~2016年の公式GDPの伸び率は李克強指数よりも高かった一方、2017年はむしろ公式統計のほうが弱い結果となっていた。
実際の中国GDP成長率は、李克強指数が示すように2015年は2~3%台、2016年は4~5%台まで鈍化していた可能性がある。そして、2017年は逆に8~9%台まで成長率が加速していたとみられる。
なお、李克強指数もまた実際の経済成長率を反映できていないという批判があることには留意が必要だ。一般に経済が成熟化すればサービス業のシェアが拡大するが、鉄道貨物輸送量ではサービス業の成長をとらえることができない、などの指摘がある。
とはいえ、ほかに適当な指標もないことから、今回はこの李克強指数をベースに中国経済鈍化が世界経済に与える影響を考えた。
中国経済鈍化の世界経済への影響を試算
中国の2018年の経済成長率目標は2017年と同じ「6.5%前後」となる見込みである。公式統計を信じ、仮にこの目標どおりの成長を達成したとすれば2018年のGDP成長率は2017年の6.9%から0.4%ポイントの鈍化にとどまることになる。現状では世界経済全体に対して中国経済の動向があくまでもテールリスクとしてしかみられていないのは、成長鈍化が小幅にとどまると予想されているからだろう。
ここで、ベクトル自己回帰モデル(VAR)という方法を用いて中国GDP成長率の公式統計が各国・地域の成長率に与える影響を推計した(推計は筆者とみずほ証券・能瀬昂介マーケットエコノミストが共同で行った)。試算方法の詳細は割愛するが、過去の各国・地域の成長率データを用い、中国経済鈍化のショックを与えてその応答を見るというモデルである。
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