ソフトバンク、「主力子会社IPO」の勝算と懸念 親子上場が内包する課題を乗り越えられるか

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これまで、ソフトバンクグループは将来の成長を重視するとして配当性向を10%程度に抑えてきた。現状、ソフトバンクの営業利益は7000億円程度。単純に法人税率を40%で試算すると、純利益は4200億円。ここから配当性向20~30%を実施したならば、ソフトバンクグループの出資比率が7割だった場合、年間に得られる配当は1000億円に満たなくなる。配当金額は、外部にも流出していく。

孫社長は「上場した時にかなりの額の資金が入る。財務バランスの強化や成長資金にすぐ使えるというメリットもある。すぐ使えるというメリットと、後々毎年少しずつ外部に流出することのバランスだ」と説明するが、影響が出るのは間違いない。

持ち株会社と事業会社の役割分担を明確化

300年企業になるため、各分野のトップ企業からなる「群戦略」を推進すると孫社長は語る(撮影:今井康一)

また、「親子上場」には、子会社の経営権を握る親会社と、子会社の株主のメリットとデメリットが対立する「利益相反」を心配する声も多い。孫氏は「何で親子上場するんだ、世界の時勢に合わないのではないか、と批判する人もたくさんいると思う。懸念は当たり前」と話す。

それでも、上場準備を進める理由について孫氏は、世界中の優れた企業に出資してグループに集結させることで300年続く企業にするための「群(ぐん)戦略」があると強調。「ソフトバンクグループが戦略的持ち株会社なら、オペレーティングカンパニーはそれぞれが独立自尊であった方がいい」として、持ち株会社のソフトバンクグループをより投資などに集中させ、事業会社との役割分担を明確化していく狙いを述べた。

こうした狙いは2000年前後に語っていた構想「インターネット財閥」と通底しており、孫社長の一貫した戦略といえる。その構想をようやく大規模な形で実施する、ということなのだろう。

とはいえ、親子上場に対する懸念の数々は杞憂とはいえない。株式市場は、史上最大のIPOの可否について、どのような答えを出すのだろうか。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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