インフル治療「タミフル」は万能ではないのか WHOは必須医薬品リストから外した
気道でウイルスが増殖するうち、体は何かまずいことが起きていることに気づく。そして免疫系という防衛部隊を動員して炎症反応を起こし、抗ウイルス作用のあるインターフェロンというタンパク質を放出する。インターフェロンは血流量を増やすとともに、粘液中に「キャンプ」を設営、サイトカインというタンパク質の参戦を促す。これらのタンパク質は全身をめぐり、臨戦態勢を整える。
「逆説的なことだが、症状が引き起こされる原因は体を守る戦いのために作り出された(免疫反応を司る)兵士たちだ」とシャフナーは言う。
脱水症状には注意を
「戦争は被害をもたらす。だから熱が出て頭痛がし、筋肉痛になったりする」。インフルエンザ発症の際に突然見舞われる激しい症状はまさにこれで、普通の風邪との違いでもある。
痛みと熱はまた、たくさんの水分を取らなければならないシグナルでもある。体内で起きている大乱戦は、想像以上に体から水分を奪っていく。尿が濃くなったり、回数が少なくなることに気づくかもしれない。専門家によれば、1時間にコップ1杯の水などの飲み物を飲むようにしなければならないという(ただしカフェインが入っているものやアルコール飲料はやめておくこと)。
水分を取ると頭痛が軽減される効果が望めるほか、体内の免疫反応が強化される。これはウイルスと戦うタンパク質が体液によって運ばれるためで、脱水状態になるとスムーズな運搬が阻害される。具合が悪いときにスープが飲みたくなったり、水分が豊富な果物が欲しくなる理由の一端はここにある。
体調が悪くて患者がぐったりする一方で、ウイルスが巣くう気道では真の戦いが続いている。戦いが収束に向かい始めると、痛みや熱は軽くなっていく。だがのどや副鼻腔、気管支の炎症は残る。シャフナーによれば、これらの粘膜を覆う細胞は損傷を受けており、ただれたような状態になっているのだという。鼻水が出たりくしゃみや咳が出始めるのも、戦いが残した残骸を掃除するためだ。