インフルエンザ予防接種は、無意味ではない 接種しないと「2.5倍」リスクが高まる
ワクチンとはウイルスや細菌による感染が起こった場合に、抵抗力をつけるための予防方法である。そのため「ワクチンを接種したけどインフルエンザになってしまった」との経験から、ワクチン接種は意味がないと考える人がいるようだ。
VPD(Vaccine Preventable Diseases)と呼ばれるワクチンが有効な感染症として、はしか、結核、B型肝炎、日本脳炎、破傷風などがあるが、これらと比較してインフルエンザは確かに効き目に個人差があることは否定できない。
インフルエンザは変異しやすい
2009年には「新型インフルエンザ」のパンデミックが世界的に懸念されたが、今ではA型インフルエンザのH1N1として、今シーズンの予防接種にも組み込まれている。インフルエンザウイルスは変異しやすく、また、流行する型が年によって変わってくる点がほかのVPDとの違いである。この点に誤解が多く、インフルエンザワクチンは意味がない、と考えている人も多い。個人間でもワクチン接種の効果の差が出てくる点も、インフルエンザワクチンに疑問を呈する人が多い原因であると筆者は考える。
今までにある型のインフルエンザに感染したことのある人はベースとなる抗体が存在しているが、感染したことのない人にとってそのインフルエンザに対する抗体はない。流行の季節に感染の既往があるインフルエンザの予防接種を受けた場合、感染の既往のない人に比べるとより免疫効果が発揮される。
子どもは予防接種を2回受けることが推奨され、大人は1回である理由はこれである。大人の場合、今まで1回くらい同じ型のインフルエンザに感染したであろう(症状が出ようが出まいが)との予測で1回接種で済む。しかし、子どもはその季節に流行すると考えられる型に感染した可能性が低いから、しっかりと抗体を作るために2回接種が推奨されているのである。ほかの多くのVPDと違いインフルエンザは変異しやすいために終生免疫が得られない点も、ほかのワクチンと比較して効果がないと判断する人がいるという問題もある。
世界的に見て、インフルエンザワクチン不要論が大きな国は、筆者の知るかぎりは日本だけである。ワクチン不要論の背景として「前橋レポート」の存在は無視できない。このレポートはインフルエンザの集団予防接種が廃止されるに至った大きな要因となった。
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